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2005年に「金沢望郷歌」でデビューを飾ってから、この9月21日で丸20年を数える松原健之。“奇跡のクリスタルボイス”と謳われたその声も、柔らかな笑顔と共に伝わって来る温かな人柄も変わらぬまま、今年46歳を迎えるという。晩夏と初秋の気配がせめぎあう、9月11日、札幌共済ホールで開かれた20周年コンサートに足を運んだ。
昨年、ギターの弾き語りを中心としたステージを見て以来、ほぼ一年ぶりとなるが、この日のステージにはピアノ(塩入俊哉)、ヴァイオリン(徳永希和子)、ギター(渡辺格)、ベース(齋藤順)、ドラム(曽根未宇司)がスタンバイ、今回はバンド編成ということで、サウンドにも厚みと深みが増すだろうと期待感が高まる。ピアノのイントロに誘われるように登場した松原は、柄もののシャツにパンツスタイルのラフな姿で椅子に腰かけると、加藤登紀子の「時には昔の話を」をおもむろに歌い出した。
それはそのまま時の歯車がゆっくりと回転するような幕開けだった。プロ歌手になるまでを、歌で綴りながら聞かせてくれるという趣向で、小さな子供だった頃や卓球に夢中だった少年時代、カラオケで意味も分からず大人びた「ホテル」を歌った中学生の松原、おじいちゃんの聞かせてくれた「柿の木坂の家」など、ステージの向こうに映像が浮かぶような選曲で来し方を語り、歌い継いでいく。様々な音楽祭やコンテストで頭角を現し始め、ついに優勝を勝ち取るまでを、メドレーあり、ポップスありで楽しませる。そしてプロへの切符を手にし、この世界への扉を開いた20年前の彼の姿が、デビュー曲「金沢望郷歌」を歌うステージ上の彼に重なり、客席も共に20年を旅してきたかのような思いにさせられる演出が心憎いほどだった。そう言えば松原の来し方を振り返った楽曲たちも「いい日旅立ち」「夢追い酒」「旅の終りに」など『時』『旅』『夢』などのフレーズがちりばめられていたことに気づく。若かりし松原青年の旅路を辿る、前半でもあった。
休憩を挟んで、今度はライトのなかにゴージャスな衣装に身を包んだ松原が登場。ふたたび「金沢望郷歌」を、今度はフルコーラスじっくりと歌う。プロとして20年積み重ねた誇りと自信が、今の松原健之の歌となっているということだろう。
そしてここからはたっぷり松原健之の世界を展開。まず、20周年記念の第一弾シングルで、日本音楽著作家連合が主催の「第39回
藤田まさと記念・新作歌謡作品コンクール」の最優秀作品「愛になるふたり」を披露。次に北国にちなんだ楽曲「雪風」「雪」「マリモの湖」を披露したり、バラードからアップテンポな曲、抒情味たっぷりの曲までを披露したりと、独特な高音の美しさを損ねることなく、繊細に歌詞を伝えながら歌う。松原の声には愁いを帯びた透明感が備わっているので、歌が情緒豊かにそれぞれの表情を表してくる。そこに観客は酔いしれるのだろう。歌に酔いトークで和み、時間の経つ早ささえ忘れるほどで「北陸本線」「冬のひまわり」「あなたに花を」と歌い紡ぐともう残された時間は少ないと知らされる。
観客の寂しさを吹き飛ばすように、アンコールに持ってきたのが、10月15日リリースの20周年記念シングル第二弾「愛が泣く
日本海」である。スケール感のある楽曲を朗々と歌い上げ、もう一つ表現の幅を広げたことを感じさせる新境地を見せた。
この日も松原はステージ上のバンドメンバーや、スタッフに細やかな気遣いと感謝を表し、強い信頼と絆を感じさせる一面からも彼の誠実さが伝わってきた。歳月を重ねて尚、そういった変らぬところが彼の魅力でもある。
今後、デビューのきっかけにもなった、劇団前進座の特別公演、山本周五郎の「雨あがる」にゲスト出演(11月19日旭川市民文化会館大ホール、11月21日札幌市教育文化会館大ホール)が決まっているほか、年末には12月7日グランドメルキュール札幌大通公園(旧ロイトン札幌)でのクリスマス・ディナー・ショーも、昼夜二公演で開催される。
10月15日の新曲リリースと合わせて、秋から冬にかけてもスケジュールが目白押しのようだが、この先も30年、40年と変わらぬ魅力に磨きをかけて、楽しませてほしいものである。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
昨年に引き続き、紋別郡湧別町出身のオホーツク太郎が7月23日、札幌市民交流プラザ・クリエイティブスタジオでライブを開催した。
今回は第一部で講談を、そして第二部では歌謡ショーをと二段構えの構成で、自慢の喉をたっぷり楽しんでもらおうという趣向。客席は蛍光団扇やペンライトなどを手にしたファンを始め、カラオケファンや故郷からの応援など、各地から詰めかけた人々で超満員に膨れ上がった。
まだ暗い舞台には、講談師が使う釈台とマイクがしつらえられている。いよいよオープニング、出囃子と共に和服に袴姿のオホーツク太郎が登場すると、割れんばかりの拍手に加え、前方の客席からは声もかかる。マイクの前に座ると居住まいを正し、これから語る講談の説明を始めた。
江戸幕府の命により、蝦夷地斜里の警備についた津軽藩の下級武士が記した日記には、蝦夷地での厳しい自然のなかでの勤務状況や、極寒の地ゆえの病に大勢の武士が命を落とした事実が記録されていたという。偶然発見されたその日記により、長い間歴史の闇に葬られていた史実が掘り起こされ、斜里と弘前の交流が始まり、津軽藩士殉難の慰霊のためにねぷたが弘前から斜里に持ち込まれたという、北海道にいてもなかなか知ることのない話に客席も真剣に耳を傾けた。
そしてそこから始まる講談「松前詰合日記・伝」を熱演するオホーツク太郎。身体を動かし、張扇で釈台を叩き、時に声を潜め、時には大声を張り上げ、いつしか会場中が固唾を飲んで聞き入り、終れば万雷の拍手、会場丸ごとすっぽりと彼の手中に収まってしまった感があった。
ここで休憩をはさみ、第二部の歌謡ショーの幕が開く。舞台上手には真っ赤な花のアレンジメント、下手にはギターが据えられてある。そしてラヴェンダー・パープルのスーツに着替えたオホーツク太郎が登場。巷談の和服姿とは打って変わって晴れやかな顔で客席を見渡す。
客席も息を詰めて見守った一部から、ほっと肩の力が抜けて、今度は歌を楽しもうと待ち構えている。
まずはあいさつ代わりにと「悲恋雀」と「シャドウ―」の二曲を歌ってくれた。第一部であれほど力をこめて講談を披露してくれたのに、まるで別な喉でも持っているかのように声がよく響く。さすがに汗は止められないと見え、たびたび眼鏡の曇りを拭き、鼻をかみながら忙しくステージを動き回るその姿さえ、軽妙なトークと共に客席の笑いを誘い、和ませて行くのは、彼らしいステージ運びだ。「あと三日…」「ホテルサパージュ」「柘榴坂」とお洒落で大人なナンバーで酔わせてくれるかと思えば、ギターを手にバンド時代の朋友とその息子を想って作った「何処へ」のように胸にしみる楽曲を聞かせる。その落差を埋めるMCは、巧まずしてその場の空気をすくい上げ、客席を暗くさせることがない。
多分作った本人も一押しだったと思われる「一ツ木通りの女」でムードたっぷりに太郎節をきかせながら客席をまわり、ノリの良い最新曲「恋の迷宮ダンシングナイト」でぱあっと華やかに場内からの手拍子を誘って盛り上げた。
ここでリリース前の新曲、彼の10周年記念シングルになる「この時を止めて」を披露。彼の青春時代の思いを込めたという、恋の歌が届けられる。やはり歌はどこまでも二の線である。そして、カラオケファンの間で根強い人気を誇る「命の港」で締めくくると大きな花束を受け取り、すぐにアンコールに応えてくれた。
母を思って作った「あかね色の布団」を聞かせると、しんみりした空気を吹き飛ばすべく、やはりオホーツク太郎はこれが真骨頂とばかりに「生きていりゃこそ人生だ!」で賑やかにステージを終えた。
終わってみて、歌の聞き応えの重さに比べ、軽やかな温もりを感じさせるステージの心地よさは、この人の持って生まれたキャラクターのなせる技なのだろうと、改めて思った。新曲のリリースを楽しみに待ちながら、次のステージへ早くも期待が膨らむのを感じていた。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
富良野市出身で北海道を中心に活動中のほしのしほが、活動10周年とニューシングルリリースを記念したワンマンライブを開催。 会場となった札幌cube
gardenには淡いピンクのバルーンがディスプレイされ、春らしい柔らかな雰囲気。オープニングには事務所の先輩で楽曲制作にも携わっている、新ひだか町出身、在住のシンガーソングライター阿部卓馬が登場。祝福のメッセージとともに数曲を披露し、会場を和ませる。
いったん照明が落ち、ステージにゆったりとした白いドレス姿のほしのしほがバンドを従え登場。眩いライトを浴びてオリジナル曲「名もない花」を伸びやかに歌うと会場中が一気に明るい空気に包まれる。二本のギターにキーボード、ベース、ドラムという編成のバンドサウンドのなかにあって、透明度の高いほしのの声がバンドサウンドでぐっと押し上げられるように聞こえてくる。「街」「まっすぐ」「風とリュミエール」など、この10年の活動の間に歌い紡いできたオリジナル楽曲を披露してゆく。「とうさんの歌」ではギター二本だけのアコースティック編成で聞かせ、彼女の思いこもった歌詞が会場内に良く響いた。
自身の曲作りにつながる体験や思い出」なども語り、「シエル」「HOTARU」とオリジナル曲をひときわ味わい深く聞かせてくれると、ここでステージ進行の順番を間違える一幕も。歌っている間は堂々としていたが、やはり緊張していたのだろう。本人も笑いながら、本来のカバーコーナーへ移り、大好きだというMISIAの「逢いたくていま」と泰葉の「フライディ・チャイナタウン」を延び延びと聞かせた。続いて、オープニングにも登場した阿部卓馬作詞:作曲の「この地球(ほし)の栞」を、編曲者でもありバンドメンバーの西岡俊明氏がギターをフリューゲル・ホルンに持ち変えて演奏する中、歌った。
さて、いよいよ新曲のお披露目である。まずはカップリングの、母への感謝をこめて作られた「手」という楽曲。じつはこの日、ほしのは自身が新しい命を授かったことをステージ上で明かしていた。新曲のジャケットには柔らかなタッチで命を包むまさにその手が描かれている。かつては柔らかな手に包まれていた自分が、今度は母となってその手で育む命、その貴重な経験を歌にしたいと、生まれてくる我が子に向けてつくられた「Bright~あなたへ贈る歌~」を、会場に来ていた作曲者で彼女が師とも仰ぐ島みやえい子さんが見守る中、突き抜けるような歌声をいっぱいに響かせて歌い上げ、感動的なラストを迎えた。
アンコールでは 再び阿部卓馬を迎え入れ、「ハナミズキ/一青窈&徳永英明コラボ
ver.」をダブルボーカルでカバーし、最後は「ラベンダーの街で」で締めくくった。
この会場は7年前にも一度立ったことがあると言っていたが、久々の大きいステージに幾分緊張しながらも笑顔を絶やさず、メンバーと呼吸を合わせてライブを進行していく姿に、去年の1月に円山夜想(マルヤマノクターン)で新曲発表記念ライブを行った姿を重ねてみた。するとたった一年の間に、身にまとう空気がふわりとひとまわり大きく広がったように感じられた。日々研鑽を積んでいるということだろう。
母となり、また、ひとまわりもふたまわりも大きく、豊かな歌い手となって行くであろうことは想像に難くない。その時はまた、新たな作品を携えてステージに戻って来ることだろうから、期待を込めてその日を待ちたい。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
5月17日、デビュー45周年を数える五十嵐浩晃の記念コンサートが札幌コンサートホールKitara 小ホールで開かれた。
朝からの好天が怪しげな空模様へと移り始める頃、ステージに五十嵐が登場。オープニングトークで天気も揶揄(やゆ)しながらの駄洒落満載、いつもの五十嵐節絶好調のようだ。会場のリアクションもひときわ大きい。それもそのはず、3年前、65歳のバースデー・コンサートの時はコロナ禍の真っ最中で、声を掛けることも一緒に歌うことも叶わなかったのだから。
今日はバンドを従え、一曲目「愛は風まかせ」からスタート。ボサノバテイストのサウンドに乗せ、変わらぬ伸びやかな高音が響き渡ると、観客が一瞬にして静まり返り、聞き惚れる。五十嵐のコンサートはトークと歌のギャップが大きいが、その味わいは今日も裏切られることなく、待ちきれない観客と嬉しさを隠し切れない五十嵐の心が通い合う、上々の滑り出しとなった。
「ブリージー・ナイト」「夢泥棒」「インディアン・サマー」など、懐かしいナンバーが届けられ、「街は恋人」でひとしきり重ねた年齢を忘れさせる瑞々しい歌声に驚かされた後、サポート・メンバーの高橋智美とデュエットで「グラデーション」「ソング・フォー・ユー」の二曲が披露される。そして「ディープ・パープル」でたっぷり余韻を残しながら一部を締めくくった。
二部の始まりを待つ間、以前インタビューした時、「歌もギターも、もっとうまくなりたい」と五十嵐が語っていたことを思い出した。その言葉通り、歌もギターも日々磨きをかけてきたであろうことは、今日のステージからも容易に想像できた。❜80年代シティ・ポップの申し子のように言われたデビュー当時から、45年を経て尚、少しの衰えも感じさせない歌声が、嬉しくもあり驚きでもある。68歳がその声にさわやかさとか瑞々しさを保ち続けるために、どれだけのものを積み重ねてきたのか想像は遠く及ばないが、頭が下がる思いがした。
再びステージ現れた五十嵐、今度は弾き語りで第二部のスタート。小ネタをはさみながら「サマートワイライト」「幸せいろのなみだ」「ランプ・アウト」の三曲を聞かせてくれると、再びバンドを呼び込み、「11月」「ナチュラル・ロード」「東京って」等を披露したが、途中歌詞を飛ばすという、年齢を思い出させる一幕も笑いで包むという、五十嵐らしい一面も伺わせた。
それでも今回のステージでは、スローなイントロだったり、ボサノバのリズムを刻んでみたりと、往時のサウンドに加えられたアレンジに大人な香りがしのばせてあり、馴染みの曲がちょっと大人っぽくなった顔を見せてくれるのも嬉しかった。
「ペガサスの朝」をラストに持ってきて、コロナ禍では我慢を強いられた観客も、拍手や手拍子はもとより、大きな掛け声や歌声、手を振り、体を揺らし、存分にステージへ思いを届け、45周年を祝福するにふさわしいステージだった。
そのままアンコールで「そよ風の頃」を歌うと、「愛は風まかせ」をワンコーラス、スローテンポで歌い、この日のステージを締めくくった。
”ちょっと大人の五十嵐“を味わえたコンサートは、次の70歳バースデー、あるいはデビュー50周年に向けて、大きく期待を膨らませてくれた。秋頃にはアルバムもと語っていたが、ステージであれ作品であれ、この先どんな楽曲をどんな風に聞かせてくれるのか、あの声はどこまで伸び続けるのか、尽きない興味と共に心待ちにしたい。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
札幌にも遅い春の歩みがようやく進み始める頃、演歌のサラブレッド、木村徹二のステージが開催された。父に鳥羽一郎、叔父に山川豊、そして実兄が作詞・作曲家であり歌手でもある木村竜蔵とまぎれもない音楽一家にあって、この道は迷うことなく足を踏み入れた世界だったのだろう。デビュー三年目というが、堂々たる歌手ぶりには並々ならぬ才がうかがえた。
先ずは北国ツアー初日の3月28日、札幌・共済ホールで幕を開ける。一般及び友情出演者の歌唱が終り、ステージへ現れた木村。183センチの長身に春らしい明るい色調のスーツが華やかでよく似合い、登場から纏(まと)うオーラが違うと感じさせる。けれどもひとたび口を開けば、自身のルーツからはじまり、父や叔父も引き合いに出して観客の興味を引きながら、あっという間に客席を和ませるあたり、トークの技もかなりと見た。
自身の楽曲「つむじ風」で「ガツンと響く!アイアンボイス」のキャッチコピーそのままの骨太な歌唱を披露。つづいて、ファンサービスとばかりに「顔の怖い方から」と断って父鳥羽一郎の「兄弟船」を朗々と歌い上げる。そして父の素顔をひとくさり。笑いを誘いながら、家族の温かな雰囲気までも伝えてくれる。次に叔父の「函館本線」を歌うのだが、もともと“父親譲りの”アイアンボイスと称されることの多かった木村の声が、デビュー当時の山川の声を彷彿とさせ、思わずステージを見返してしまうほどそっくりで、これには驚かされた。叔父の山川豊が闘病中ながら、歌手活動を再開し、ファミリー・ステージも木村家総出演で行ってきていることから、健康に留意している父と叔父の二人を、ここでは身内というより尊敬する先輩として見習っていると明かした。
木村自身、山川の作品の中でも一番好きだという「アメリカ橋」を歌いながら客席へ降りてくると、次から次へと差し伸べられる手に握手を返しながら、丁寧に客席の一人一人とアイコンタクトをしていく。ユーモアあふれるトークを巧みに織り交ぜながら、鳥羽一郎の「龍神」や兄、木村竜蔵プロデュースによる木村徹二のデビュー曲で第65回日本レコード大賞新人賞を受賞した「二代目」を歌うと、場内は笑いがあふれたり、聞き惚れたりとすっかり木村の虜になっている。
ここで芸名ではなく本名で活動しているエピソードを披露した後、津軽三味線の音色がひときわ印象的な第二弾シングル「みだれ咲き」の歌唱に場内が一瞬引き締まる。こちらも兄の手になる作品だが、木村の声がよく伸び、力強いエールを送られているかの様で、ステージの緩急が心地よい。
終盤にきて新曲「雪唄」がいよいよ披露される。まずはカップリングの「湯の街」と「忘らりょか」を歌い、最後に満を持して、やはり兄の手になる「雪唄」。これは今までの木村の作品とはがらりと雰囲気を変えて、どちらかといえばポップス寄りの楽曲だ。これまで骨太と言われてきた木村の声が、こんなに滑らかに繊細な表現をするのかと、その歌唱力の持つポテンシャルに瞠目(どうもく)させられた。もともと、カバーアルバムやステージで多様な楽曲を歌いこなしてきただけあって、これから先の作品へも大きな期待と楽しみが寄せられるにちがいない。
この後、旭川、北見でも『歌で元気!北海道歌まつり』を開催。コンスタントにテレビ出演を果たし、コンサートもこなして精力的に活動を続ける木村徹二。今年はさらなる成果を上げる一年となる事だろう。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
3月も終わりに近づき、日ごとに春めいて来始めた22日、札幌cube gardenにおいて
みのやの恒例RLT(リアルライブツー)のステージが行われた。
昨年の共済ホールから一段と距離の縮まったライブスペースには、早くもファンの熱気が渦巻いている。前日は同じ場所でアコースティック・ライブが行われているが、この日はバンドを従え登場。
いつもよりひとまわり大きく感じるその体躯に、バンドのサウンドがスケール感をバックアップするのか、なんだかステージが狭く感じられる。「涙流した人ほど」を皮切りに「愛だけは」と続けて、まずは挨拶がわりのトーク。いつもながら、何の脈絡もなく、飄々と喋り始め、あっという間に客席を自分のフィールドに持っていく。表情や仕草が手に取るように伝わって来て、隣に座ってしゃべっているくらいの感覚で、ふいに話しかけられ、つい釣り込まれて笑ってしまう客席は、もうみのやの手の内にある。
そうか、これが今回のみのやの狙いなのだな、と気づく。どんな会場でも瞬時に自分のフィールドに引きずり込み、どっぷりとみのやワールドに浸らせる、という点において、この男は長けているのである。ライブハウスを埋め尽くした観客を、一人もそらせず、聞かせ、泣かせ、笑わせて感動へと導いていく。今日は至近距離から速射砲を浴びるように、このステージを味わうことになるのだ、と覚悟を決めて向き合うことにする。
日々の暮らしの中から掬(すく)い上げるささやかな出来事や、見つめる風景、思い出す人や家族の情景に注がれるみのやの愛情が、爆笑や涙を誘ったあとのそれぞれの歌に色濃く滲んで、今回のステージは「愛」が届けられているのだなぁと気づく。とりわけ家族写真にまつわる、みのやの肉親への情愛を感じた後の「あの日に帰れる汽車があるなら」や、後輩アーティスト、風輪とのエピソードをはさんで「夢しかなかった」「夢を叶えたとき」、また親友の奥さんでもあり、楽曲提供もした歌手ちはらさきさんの逝去を悼んで「雪の花」「さよならの花が咲く」を披露したとき、そして自身のデビューまでの道程に、みのやを厳しく育てようとしたSTVラジオのディレクターと、みのやの家族の間にかわされた密約の存在のくだりのあとの「伏線回収」と様々な形で、さながら満天の星屑のごとく、そこかしこに散りばめられているのである。客席も腹を抱えたり、目元を潤ませたり、目の前のみのやに一人一人が愛しさの感情を束ねて手渡そうとするかのようで、愛が行き交う場内の空気は密度がひときわ濃い。
眼を閉じて聞いていると、いつもの熱い応援歌や背中を押してくれる力強い歌声よりも、言葉の花束や星屑のヴェールで柔らかく包み込まれるような、やさしさと温かさに溢れたステージだということを実感する。
デビュー45年を目前に控え、まだまだ歩を緩めようとしない男の熱量に圧倒されながら、「愛」の速射砲を浴びたにしては、涙で重くなることもなく、どこかさわやかな感動すら味わえた、とても後味の良いライブだったことを思い返した。年末のRLT2025
Road to debut 45th vol.2(札幌は12月13,14日2days、札幌cube garden)のステージに今度は何を届けてくれるのか、自分勝手な予想と大いなる期待を抱きながら家路についた。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
初冬にしては温かな午後、札幌教育文化会館(小ホール)で、こおり健太コンサート2024が昼夜二公演開催された。~爆笑・唄だより~と銘打たれた昼公演、~熱唱‼泣き節・健太郎節~の夜公演の昼のステージに足を運んでみた。
眩いライトの中緞帳が上がると、深々と頭を下げるこおりの姿が現れる。そのまま1曲目に歌い出したのが、9月11日に出したばかりの最新曲「裏町蛍」、健太お得意の女唄だ。客席からは早くも「新曲だね。」「これ良い曲だよね。」との囁きが交わされている。ファンの間にはすでに浸透済みとみえ、歌い終えたこおりに大きな拍手が降り注いだ。その拍手に応えるかのように威勢よく「夢・種まき音頭」そして「恋は上機嫌」とアップテンポの曲が続くと、客席も手拍子やペンライトを振って明るく華やかなオープニングとなった。
ここで初めて「こんにちはー!」とひときわ大きな声でこおりが元気のよい挨拶、ラジオで鍛えた軽妙なトークで、あっという間に会場を笑いの渦に巻き込んでいく。が、一呼吸おいて、デビュー15周年記念シングル「しろつめ草」を披露すると、客席は静まりじっと聞き入る。かと思えば、どうしてコンサートを水曜日にしたのか、年配層の多い客席を見渡して、「僕のお客さんはね、月曜は大体病院へ行く人が多くて、金曜は買い出しに行く人が多いから、真ん中の水曜にしたんです。」と言うなど、どうやらこのステージは、タイトル通り笑わせ、聞かせの波状攻撃で攻めてくるようだ。
その予想通り、花の歌で綴るオリジナル三曲「山吹の花」「桜の下で」「冬椿」、北海道にちなんだ「礼文宿」と、新曲「裏町蛍」のカップリング「小樽…ひとり旅」を歌ったところで、この日のゲスト、これが笑いの秘密兵器とでも言おうかタブレット純を呼び込んだ。ギタレレを演奏しながら、加藤登紀子の「知床旅情」をこおりと歌うと、しばし一人舞台を務め、一見か細いルックスから、七色の声を操り、歌にトークにものまねにと会場を翻弄する。再び登場したしたこおりと丁々発止のやりとりをするかと思えば、二人で「野に咲く花のように」をデュエットする一幕もあり、タイトルにある“爆笑”の部分をきっちり担っていった。
ひととき抱腹絶倒の波に襲われた客席も、こおりが故郷にちなんで山本譲二の「みちのくひとり旅」を歌うや、またしても聞き入りモードに。そしてそんな空気を和ませるかのように、山本譲二との交流を明かす。先輩からも可愛がられるこおりの人柄がうかがえるエピソードトークに、またしても客席は笑いに包まれる。そこへたたみかけるように「北酒場」「若い二人」「いつでも夢を」「星降る街角」と昭和演歌・歌謡曲のカバーメドレーを歌いながら、客席をまわると、一気に歓声が弾け、手拍子にコーラスも巻き起こる。しまいには回り切れないとみて、すかさずオリジナル「肥後の盆」を歌う間も客席をまわり続け、一人でも多くの観客を喜ばせようと歓声に応え続けた。
興奮さめやらぬ場内に、今度はこおりと親交の深かった日高晤郎作詞、吉幾三作曲の「歩き続けて」を届け、最後は「風の道」で締めくくった。
鳴りやまない拍手に応えて再びステージに現れたこおりが、アンコールに選んだのは「笑顔の宝物」「しあわせの場所」。手拍子や健太コールが響く。真骨頂の女唄ではたっぷり健太節を聞かせ、トークでは思い切り楽しませ、ゲストともども笑わせ、大満足の観客を前に、明るく楽しくこおりらしくステージの幕を閉じた。
見終わっても身体の芯がぽかぽかしているような、心温もるコンサートだった。昼夜二公演とも完売のステージは、来年への期待をいやがうえにも膨らませてくれる。歌も話術もさらに磨きのかかった、こおり健太に会えることを待ち望みながら会場を後にした。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
YouTube動画配信、【フロムサウンズの「Happyミューズ」-音楽の女神達―】の公開収録&ランチショーが、2024年12月1日(日)、ジャスマックプラザ「ザナドゥ」で大江裕をスペシャル・ゲストに迎えて開催された。
今回、同番組のメインMCだった歌手ちはらさきが11月11日に亡くなったことを受け、その追悼ライブとしても催された。まずはちはらがMCを務め、多くの歌手が出演した同番組の1年間分のダイジェスト版が場内に流されたが、場内からは在りし日の姿に涙ぐむ者もいた。
総合司会を田村剛志、番組でサブMCを務めていた金沢さやかがナレーション、そしてパーソナリティはフロムサウンズ所属アーティストでもある阿部卓馬・ほしのしほが務め、ほしの、阿部をはじめ、武山あきよ、近江亜矢、山本裕美子とフロムサウンズ所属で道内を中心に活動中の歌手が、事務所の先輩でもあったちはらに追悼の一言を添え、各々持ち歌や思い出の歌を披露、その後には佐々木忍弥の津軽三味線、お笑い芸人スズランによるコント、またペルシェンベHABIBEによるベリーダンスなど多彩なステージが繰り広げられた。
続いてスペシャル・ゲストとして登場した大江裕も、デビュー時からちはらとは数々のステージ・イベント等で共演しており、大江にとってもちはらは大切な歌手仲間であり、数々の思い出を語った後、新曲「北海ながれ歌」をはじめミニステージで数曲を披露したが、その圧巻の歌唱力に会場は聞き入り、最後は大きな拍手と歓声が巻き起こり、ぐっとステージを盛り上げた。
ここまででYouTube収録は終わり、急遽、駆け付けたみのや雅彦がステージに登場。ちはらの兄貴分的な存在でもあり、ちはらの代表作ともいえる「雪の花」、「さよならの花が咲く」等を作詞曲したシンガーソングライターみのや雅彦が、追悼の思いを込め、熱いステージを天国のちはらへ届けていた。
全てのプログラムが終了、出演者がステージ上に揃った時、みんなの呼びかけで、事務所の代表であり、当日の総合プロデュースを務め、ちはらさきと二人三脚でフロムサウンズを引っ張ってきた來来本桃子代表が登壇、この日で最終回を迎えたYouTube【Happyミューズ」-音楽の女神達―】や、ちはらさきへと多くの思いを乗せた公開収録、歌謡ショーは幕を下ろした。
※各画像クリックで拡大写真がご覧になれます。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
2024年11月3日、晩秋の色濃い中島公園沿い、鴨々川通りに面した渡辺淳一文学館
地下ホールで開かれた、栗山町出身のシンガーソングライター川上雄大のコンサートに足を運んでみた。2017年8月からスタートして11回目の渡辺淳一文学館でのコンサート、今回は2年振りとのことで、どんなステージが繰り広げられるのか楽しみにしていた。
始まりのアナウンスがあると、キーボードの奏でる調べに乗せ、客席後方から川上登場。そのまま「君を翼に乗せて」を歌いながらステージへ上がるというオープニングに、客席は一気に期待が高まる。第一部の開幕だ。ここから一人でギターを弾き語るスタイルで進行していく。「君と出逢えて」を歌ったところでリクエストに応じ、まず、すずき一平の「水鏡」、続いて福山雅治の「スコール」を歌い、客席からは歓喜の声とため息が同時にもれる。単なるカバーと言うより、曲を自分に引き寄せ、自身の歌として届けてくれるのが何より嬉しい、そんな風に感じられる。
もともと10代の頃より音楽に親しみ作詞作曲を始め、16歳で応募したヤマハポピュラーソングコンテスト夕張地区大会審査員奨励賞入賞、社会人となって音楽活動から離れたものの、2015年Youtubeへの動画投稿をきっかけに50歳で音楽活動を再開。2019年に「風はいつも君を見守る」を全国発売。同曲は翌2020年発売の2ndシングル「ミュージックライフを楽しみに」と共に横山浩之監督の短編映画「その日に…」の挿入歌としても採用されている。
ステージでは弾き語りで演歌、歌謡曲も含む様々なジャンルの曲を川上テイストで披露してくれたが、彼が理事を務める北海道作詞家協会のメンバーによる作品や、その縁の方々の作品で、川上の表現力の幅広さを印象付けた。
ここで、哲学者・倫理学者の舟木祝氏がステージに登場。氏の編著による「哲学者と北のアーティストたち 表現に至るまでの道のり」(中西出版)という本が紹介された。今年9月30日に発行された、この本を書いた4人のアーティストのうちの一人が、外ならぬ川上雄大である。本によればプロのシンガーソングライターになるという夢を22歳であきらめた若者が、いかにして50歳で再び音楽活動を始め、54歳でプロデビューし、今日に至り、さらに表現活動を続けているかが記されている。これを一つのサクセス・ストーリーとしてとらえるか、いやいや良いこともあれば悪いこともある、ジェットコースターのような人生とみるか、読む人によって抱く感想は色々だろうが、彼の半生を垣間見た気がした。一つ言えることは、この本を読む前と後では、彼の歌が一色違って聞こえた。
さて、ステージでは「君に歌を贈る」で第一部の終演となり、ここからはスペシャルゲストの雷神古俣が「吼桜」をはじめ3曲を、オリジナリティあふれるギタープレイと熱いパフォーマンスで盛り上げた。
第二部はフルバンドを従えてのライブだ。衣装も一転、黒からシルバーに光るスーツに替え、ギターを手に「夜明けまでのSong」「スーパームーン」と、がらりと雰囲気の変わるノリの良い楽曲でスタート。第一部でうっとりと聞き惚れていた客席も活気づく。と、今度はギターを置いて、スタンドマイクの前に立ち、今年の4月21日に発売した最新シングル「行き止まりの愛」をじっくりと聞かせる。蒔田俊明作詞による、男と女の大人の愛を歌ったムード歌謡寄りの楽曲で、これまでの川上雄大の作品とは雰囲気の異なる1曲だ。
続いて「天使の恋」、デビュー曲の「風はいつも君を見守る」「雪あかり」と披露したところで、客席にはファンの手作りと思われるビールジョッキを模した作品が配られ、「夏だ!ビールだ!秋Ver.」で大きく弾けた。川上もそれを手にパフォーマンス、客席からも歌に合わせ、ジョッキを持つ手が上がっていた。
それを見ていて思ったのは、じっくり聞かせるところ、盛り上がるところ、ステージと客席の間には“あ、うん”の呼吸が存在するということだ。それぞれがこの時間、空間を大切に、何よりも楽しもうとする心意気のようなものが伝わって来た。
「空と海と私の心」「今生」で第二部は感動的に締めくくられ、鳴りやまない拍手の前に再び現れた川上は真っ赤なロングジャケットに身を包み、「ミュージックライフを楽しみに」を客席と共に歌い上げ、アンコールに応えてくれた。
今年はこのコンサートがソロとして最後のステージになると言っていたが、CDデビューから5周年を迎え、本を出してからのライブであり、川上にとって今年の活動の一つの集大成的なステージになったのではないだろうか。
今後、Youtubeの番組配信や、この渡辺淳一文学館でのコンサートはじめ、定期的に行われているライブなど発信の場と、理事を務める北海道作詞家協会のような創作の場での益々の活躍が期待される、そんな一夜であった。
※各画像クリックで拡大写真がご覧になれます。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
秋の気配が濃くなってきた昼下がり、ライブハウスキューブガーデンのステージに、華やかな赤いシャツと黒のパンツ姿で松原健之が現れた。会場がライブハウスということもあってか、ぐっと客席との距離も縮まり、かたわらにギターを据えただけのシンプルなステージに、スーツ姿とは一味違う松原が手に届くほどの距離に感じられる。思わず息を呑むファンを前に、まずは「カサブランカ」でステージがスタートした。いつも通りの伸びやかなクリスタルボイスに客席はうっとりと聞き惚れる。
一呼吸おいて始まりの挨拶をする松原の笑顔に、会場に詰め掛けたファンもほっと詰めていた息を吐く。それを見て松原も、緊張を解きほぐすかのように、軽妙なトークで笑わせながら、グングン客席を引き込んでいく。
「ウタキの丘で」「夕焼け雲」と披露したところで、これまでめったに語ってこなかった、デビュー前のエピソードを盛り込んだトークに続いて「金沢望郷歌」をデビュー当時のアレンジで歌うと、ふだんのコンサートでは見られない、松原の一面が次々と語られるので、観客がだんだん身を乗り出して聞き入る様子が見て取れた。
ここからはギターを手に取り、弾き語りを始める。この日、訃報が届いたばかりの西田敏行さんを偲びながら「もしもピアノが弾けたなら」に始まり、「千羽鶴の歌が聞こえる」(松坂亜季
曲/作詞:茜まさお)、「太鼓」(美空ひばり)、「オー・シャンゼリゼ」とカバーも器用にこなす。そして「わたしはピエロ」を歌うと、客席にリクエストを尋ねる。このころになると、緊張のほぐれた客席からも口々に松原のオリジナル曲や、歌って欲しい曲などリクエストがあがる。そんなファンの声に耳を傾けながら、一旦はふいとかわすようなそぶりを見せると、矢継ぎ早に「函館山から」(美空ひばり)、「石狩挽歌」(北原ミレイ)、「北陸本線」「雪」「ノラ」(門倉有希)を弾き語り、拍手喝さいを浴びた。
ここでギターを置くと、「あなたに逢いたい」を披露。この曲は今年の9月でデビュー20年目を迎えた松原が2005年のデビュー曲「金沢望郷歌」をブラッシュアップし、「金沢望郷歌2024」として今の声で歌い、リリースするカップリングに選んだ曲だ。
もともと松原はデビュー前の2001年に五木寛之、原作・脚本の舞台「旅の終りに」に出演することになり、初めて金沢を訪れたという。そのことが縁となって五木寛之作詞、弦哲也作曲の「金沢望郷歌」で2005年のデビューが決まり、デビュー前は曲を携え、その上に乗って歌うという通称“ミカン箱”を持って能登中をキャンペーンに回ったことを話しながら、その古ぼけた傷だらけの“ミカン箱”を実際にステージで見せてくれた。今回の震災や豪雨で被災した能登の人びとのことに胸を痛め、何か少しでも力になりたい、心に寄り添いたいとの思いから、デビュー曲の「金沢望郷歌」を今の声で歌い「金沢望郷歌2024」としてリリースすることに決めたと言う。19年ぶりのレコーディングで、重ねた歳月分の味わいが増した作品に仕上がった。会場には募金箱も置かれていて、仕事の合間を縫って、被災地へも足を運んでいることを語っていた。
そして、前日の16日にリリースしたばかりの新装版「金沢望郷歌2024」のカップリング「門司港フェリー」を歌いあげ、「みちのくふゆほたる」でステージを締めくくり、一旦袖に下がった。アンコールの拍手に再びステージに登場すると、客席に降りて、ファンと交歓しながら「あなたに花を」を歌い、名残を惜しむファンに手を振りながらステージを後にした。
今回会場がライブハウスということで、流れる汗も息遣いも手に取るほどに近く感じられ、生の松原健之を存分に味わうという、ある意味非常に贅沢なステージでもあった。トーク&ライブと銘打っただけあって、トークもふんだんに盛り込み、いつも以上に素の松原健之が垣間見られたのも嬉しい時間だったに違いない。ギターの弾き語りも、カバーもたっぷり楽しませてくれ、幅広いジャンルの曲も歌いこなす底力も見せてくれたが、なによりどんな歌を歌っても、彼のクリスタルボイスがその楽曲を“松原健之の歌”にしてしまうのをまざまざと見せつけた。やはり彼の声は最大の武器であり、魅力なのだ。
12月9日にはグランドメルキュール札幌大通公園(旧ロイトン札幌)を皮切りに、クリスマス・ディナーショーが始まる。松原の声に癒されるひとときで2024年を締めくくるのも、クリスマス・プレゼントとして、あるいは一年間頑張った自分へのご褒美とするのも良いかもしれない。
札幌での【松原健之 クリスマスディナーショー2024】
の詳細に関して
お問い合わせ/エーダッシュ011-533-7711
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
今年も共済ホールで、網走出身の走裕介のコンサートが開催された。毎回趣向を凝らして、どんな風に観客を喜ばせようか、どんな風に楽しませようか、と盛沢山なステージを届けてくれる。果たして今年は?と待ち構えていると、緞帳の向こうライトの中に浮かび上がったのはドラムセットの前に座る走。おや、着物姿だ。軽快にスティックを操り、「ブルー・シャトー」を弾き語りならぬ叩き語り(本人弁)で聞かせてくれると、客席からはどよめきと共に拍手が巻き起こる。つづいてデビュー曲の「流氷の駅」。そして軽妙なトークをはさんで「一期一会」「男の駅」と、お馴染みの作品が次々繰り出される。
ステージ上にはドラムセットだけでなく、エレキギター、アコースティック・ギター、そしてキーボードまでが、まるでバンドメンバーよろしく、後ろに控えて出番を待っている。案の定、走はそれらの楽器をチラチラ振り返りながら、ステージで披露するために40キロにも及ぶドラムセットを毎回ばらしてはパッキングして移動していることや、練習はしているけれど、満足いく出来にまでは到達していなくて、学芸会にお付き合いくださいと白状するキーボードなど、客席の笑いを誘いながらどんどんステージにひきつけていく。
「呼人駅」「昭和縄のれん」「おんなの雪」と歌い継いだあと、新曲の「男が母を想う時」を披露した。同曲は日本作曲家協会と日本作詞家協会が共同企画したソングコンテストで2024年の最優秀楽曲を受賞した作品であり、その歌唱者に走が選ばれ、9月25日に発売したばかりであった。亡き母を想うこの歌を、しっとりとした抒情的なメロディーに乗せて走が歌いあげると、やはりこういう作品は年齢を重ねて初めてしみじみとした味わいが出せるものだと気づかされる。ひとしきり歌が沁みた。そしてカップリングの「孤狼(ウルフ)よ走れ」では男の生き様をロック調のバラードで聞かせ、走の幅広い歌唱力を印象付けた。
ここで前半の楽曲がすべて終わり、いよいよ着物の理由が明かされる。お馴染みの口上、「外郎売」のためである。今は亡き日高晤郎氏から受け継いだ芸を、今もなお、錆びることのないよう日々研鑽を積み、毎回披露してくれる。客席も思わず息を詰めて見守る。立て板に水の如く、よどみなく口上を述べ続け、とうとう最後まで一度もつかえることなくしゃべり切った。と同時に会場からは歓声と大きな拍手が巻き起こり、これにて前半の終了。
15分の休憩をはさみ、緞帳があがると白いスーツに身を包んだ走の手にはエレキギターが。「雫」を弾き語ると、ひとしきりギターの難しさについて話したり、練習の苦労もざっくばらんに北海道弁を交えながら話したりと、客席をそらさない。
この10月30日には走裕介のオリジナルとカバーから選りすぐりの楽曲をセレクトしたアルバム「オリジナル & カバー
セレクション」がリリースになる。様々なジャンルの演歌、歌謡曲をカバーしてきた走が、今回のアルバムには「ヘッドライト」「旅の終わりに」の2曲を新録音で収録しているが、その中から同じ日本コロムビアの大先輩でもある新沼謙治の「ヘッドライト」を朗々と聞かせてくれた。
一転、今度はメドレーを歌いながら客席を巡る。あちらこちらで熱烈歓迎を受けながら、握手をして回る走は汗だくだ。客席も浮足立ち、ひと時熱のこもった交歓が続いた。
「恋懺悔」「星屑の恋」と恋歌2曲が続いたところで走がステージからはけ、動画が始まる。走による自撮りで夜の新宿駅から歌舞伎町、ゴールデン街と映し出され、さながら走のガイドでの夜の新宿散策といった趣だ。そして真っ赤なスーツで再登場した走が、「よーるーのしんじゅーくー、うーらどおりー」と八代亜紀の「なみだ恋」のカバーを歌うという正にぴったりの選曲で楽しませた。
ここから終盤に向け拍車がかかる。走のステージは楽曲数が多いのも特徴であるが、とにかく喜んでもらえるよう、楽しんでもらえるよう心を砕いているのがわかる。今度はアコースティック・ギターの弾き語りをしたかと思えば、いよいよ”学芸会“と称するキーボードの出番となり、緊張の面持ちで深呼吸しながら臨み、「桜」「時代遅れ」を歌い終えた。温かく見守った客席も走自身も、ほっと安堵の息を吐いた。
緩急自在にステージをこなしていく走を見ていると、彼自身も客席と共有するこの時間を存分に楽しもうとしているのがわかる。オリジナル曲以外にもカバー曲に外郎売の口上や楽器の弾き語り(叩き語り)、インストで「太陽にほえろ」も聞かせてくれた。サービス精神旺盛なこともこの上ないが、それらの練習をいとわず、全力で当たっているのがわかるから、客席も応援のし甲斐があろうというもの。最後に「騎士」「夢航路」を歌い、幕を降ろすと、アンコールでは「孤狼(ウルフ)よ走れ」「風来流れ唄」で締めくくったはずの緞帳がもう一度上がり、おそらく覚えたて?のカズーで「ホタルの光」を一生懸命奏でる走の姿が。これには感激を胸に万感の拍手を送っていた観客も思わず笑い出す一幕もあり、終始和やかで楽しいステージだった。
11月16日には故郷、網走で「走裕介コンサート2024in網走湖荘」という昼夜二回のステージも控えているという。彼のことだから、また目いっぱい楽しんでもらおうとあれこれ考えているに違いない。歌に誠実で、人にも誠実で、おそらく歌手としての自分にも誠実な人なのだろう。そこにファンは惹きつけられているのかもしれない。
来年もまたステージと客席の間に親密な空間を作って、オリジナルやカバーはもちろんのこと、楽器や口上など色々楽しませてくれることを大いに期待している。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
台風の間隙を縫うように、真っ青な空を取り戻した石狩の地へ、今年も「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in
EZO」(以下RSR)が戻って来た。はやる心を抑えきれないロッカー達が、開場と同時に堰を切ったようになだれ込んでいく。ステージへ、テントサイトへ、物販ブースやフェス飯へと、それぞれの目的の場所へ急ぐ人の流れがひとしきり喧しい。それらが一息つくころからあちこちのステージがぶち上がる。
SUN
STAGEのトップバッターは怒髪天。「RSR2024×怒髪天結成40周年スペシャル~仲間(ひと)のふんどし祭り~」ということで、お馴染みのふんどし隊を従え、北海道のアニキことボーカルの増子直純が神輿に乗って登場。LOUDNESSの二井原実、スターダスト☆レビューの根本要、渡辺美里、SLANGのKOHEYらゲストとコラボしたりGLAYのカバーも披露するなど、おおいに沸かせ、賑やかにフェスの開幕を寿いだ。
会場全体が熱気を帯びてくるにつれ、時折ぱらつく小雨が逆に心地よく感じられるほどで、各ステージもどんどんヒートアップしてくる。
EARTH
TENTにDISH//が登場する頃になると、次々に押し寄せる人並みで瞬く間にテントの周りに幾重にも人垣ができ入場制限までかかるほど。その人垣を超えて降り注ぐかのように北村匠海の声が響き渡る。「猫」を歌うと会場のみならず、歩いていたり、何かの順番待ちをしていたりする人までもが一緒に口ずさみ始めた。短髪黒髪姿に驚かされたが、よくとおる北村の声がバンドサウンドに乗って一気にその場を染め上げ、ライジング初参戦とは思えないアーティスト力を感じさせた。
暮れなずむBOHEMIAN
GARDENに森山直太朗がアコギで「さくら」を弾き語ると、RSRの会場の中でもひときわ和む穏やかな雰囲気にあふれた、このステージに集まった観客もうっとりと聞き惚れる。つづいてバンド演奏で「夏の終わり」を披露すると、会場中がこれ以上ない歌とロケーションのマッチングに歓声を上げるという、とっておきたい風景のような場面も見られた。
そのころSUN
STAGEではUVERworldが怒涛の如くアグレッシヴな音を轟かせると、ステージ前からはるかテントサイトの向こうまで、一瞬でさらっていく煽り様に、観客もぐいぐい引きこまれていく。ボーカルTAKUYA∞の熱が伝播していくように、地鳴りの如く音が大地を揺るがすのを肌で感じる。ハプニングさえも取り繕わず仕切り直して熱を覚めさせない。そこにはステージの上だけでなくすべてを包み込むような力強さと包容力も宿り、だからこそ聞く者の心に”刺さる“音楽になっているのだと実感できた圧巻のステージだった。
陽が落ちて過ごしやすくなったころ、RED STAR
FIELDにはRIZEの姿が。深まっていく夜に骨太なサウンドを次々繰出し、詰めかけた観客に火をつける。ステージ前から炸裂する音を浴びた興奮がはるか後方まで届き、熱は冷めることを知らない。キャリアだけでなく、3人が互いの呼吸を合わせるというよりぶつけあうようなスリリングな展開をしていくところにRIZEの面白味があると知らしめるステージに見て取れた。
この後キャンパー向けのプログラムが行われ、WurtS、ROTH BART BARONらがステージを務める中、来年の2月に活動休止するフジファブリックがRED STAR
FIELDに登場。デビュー20周年を数える彼らとゆかりの深い、斉藤宏介(UNISON SQUARE
GARDEN)や斎藤和義とコラボしたり、ヴォーカル&ギターの山内総一郎が「またいつの日かフジファブリックとしてライジングのステージに立つことを夢見ています」と語ったり、ファンにとっても胸にしみる忘れ難い一夜になったことだろう。
翌17日も朝から天気に恵まれる。
SUN STAGEに登場したLiSAが「紅蓮華」で熱いスタートを切り、観客を音で弄るかのようだ。def
garageに登場したOmoinotakeはピアノの音色と共に涼やかな声を響かせ、歌詞がよく聞こえる美しい歌声にひと時聞き惚れる。ステージごとに異なるパフォーマンスが楽しめ、自分でチョイスしてプログラミングするのもこういったフェスの醍醐味だ。
次はこのフェス最高齢の泉谷しげるが出演するBOHEMIAN
GARDENへ。新千歳空港で発生したトラブルにより会場へ向かう車中で着替え、リハもなく、50分遅れでスタートしたものの、ステージのテンションはぶっちぎりで高い。年齢を強調するMCとの落差で笑わせ、パフォーマンスで盛り上げ、まったり音楽を楽しむ会場として知られるBOHEMIAN
GARDENで大いに沸かせるステージを見せてくれた。
夕暮れのSUN STAGEに21年ぶりのスピッツが登場。1曲目から大合唱が起きる。草野マサムネの声ははるかステージを離れてもなお届き、和やかながら満足度の高いステージに会場は酔った。
花火ブレイクの後、EARTH
TENTに登場した木村カエラは、毛先を金色に染めたショートヘアをツンツンにし、白いニットのセットアップに真っ赤なタイツというキュートないでたちでギターを弾いたり、跳ねたり、1曲目の「Butterfly」から惹きつけて離さない。ひとしきり目も耳も奪われるステージに観客も大喜びだった。
同じころSUN STAGEにはRSR常連の東京スカパラダイスオーケストラが、菅田将暉やSaucy
Dogの石原慎也をゲストボーカルに迎え、華やかなパフォーマンスを披露した。RSR初参戦の菅田はここで十分温まったと見え、この後EARTH TENTでの自身のライブでは熱狂する観客を前に存分に楽しませてくれた。
そして夜も深まり、今回のRSRの一つの目玉と言ってもよい「WEEKEND LOVERS 2024”with You”」が始まった。LOSALIOSとThe
Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ)がゲストの村越”HARRY”弘明(THE STREET
SLIDERS)、イマイアキノブ、斉藤和義、YONCE(Suchmos,Hedigan’s)、奥田民生らとともに、チバユウスケの楽曲に息を吹き込み、追悼というより、その場にチバがいて一緒に楽しんでいるに違いないと思わせるほど、濃密な時間を提供してくれた。音楽は死なない、受け継がれていく。その思いを新たにする時間でもあった。
トリはSUN
STAGEのクリープハイプ。しだいに開けてゆく空と呼応するかのようなセットリストで、巧まずして雨がぱらつく場面さえ曲にマッチしているかのように馴染み、最後は「二十九、三十」で締めくくった。
初日は交通機関の影響で平井大が出演キャンセルとなったほかは、無事ステージが行われたが、二日目は一転、新千歳空港でトラブルが発生。そのため9㎜ Parabellum
Bulletが出演断念するほか、複数のアーティストに到着遅れが見込まれ、タイムテーブルの変更を余儀なくされるなど、運営側も異例の事態に見舞われた。リアルタイムで次々情報が更新され、人の流れもそれにつれて当初の動きとは変わる場面も見られたが、最後まで混乱は避けられたのは、これまでにも様々な難局を乗り越えてきたスタッフの尽力と、自由と責任の下に音楽を楽しむロッカー達の動じないハートがあったからこそかもしれない。フェスが育ってきているのを実感する場面でもあった。
二日間、天気にも恵まれ北海道らしいさわやかな空気の中でフェスを終えることができ、次回、第25回目となるRISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in
EZO開催の2025年8月15、16日まで、363日のカウントダウンを始めながらロッカー達は新しい音楽体験に向けて夢を育てる日々が再び始まった。
【RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO】
開催期間:2024.8.16(金),17(土)
総入場者数:68,000人<16(金):33,000人/17(土):35,000人)
総アクト数:73アクト<16(金):30アクト/17(土):43アクト)
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
紋別郡湧別町出身のオホーツク太郎が7月11日、札幌市民交流プラザ・クリエイティブスタジオでライブを開催した。
一読して覚える歌手名である。が、そのインパクトの大きさに負けないキャラクターの持ち主でもある。大学進学で上京すると、俳優修業した頃やシンガーソングライターとめざした時期もあったが、夢破れ帰郷。父の急逝により家業を引き継ぐと、バブルの波とその後の辛酸を味わう経験もし、再び曲つくりを始める。新たに手掛けた製塩事業を成功させ、もともと実家が営んでいた劇場「湧楽座」も再興した。落語、講談など話芸を磨きながら、本格的に音楽活動を再始動させたところへ、2013年に作詞家角谷憲二氏に出会い、「オホーツク太郎」の芸名を授かる。そして、2016年演歌歌手として全国デビューを果たした。もともとシンガーソングライター別所コータロー名義で、大人の歌謡曲を北海道から発信しようと2020年に限定リリースした作品が道内で話題を呼び、昨年新たにオホーツク太郎名義で全国発売することになったり、NHK「新・BS日本のうた」に”輝け!演歌界期待の星“の一人として出演したりと、ここへきて一段と注目度がアップしてきている。今年の4月17日にリリースした新曲「柘榴坂」を携えての札幌ライブに足を運んでみた。
左右に美しい花を配した、シックなステージ。満員の客席が今や遅しと待ち構えるところへ登場すると、一段と大きな拍手が巻き起こる。巧みな話芸でしょっぱなから客席を笑いの渦に引き込めば、あとはもうオホーツク太郎の独壇場である。この日のステージは二部構成で、第一部は「ジュエリーナイト」に始まり、「バラ色の時に・・・」「浜地蔵の唄」と続き、ここでゲストのバイオリニスト、杉田知子氏を迎え入れる。そしてバイオリンの音色と共に、札幌を舞台にした「ペルソナ札幌」を届けると、自らもギターを手にし、杉田のバイオリンと合奏しながら「ブティック」を披露し、杉田の「美しい唄」独奏で前半が終了。
休憩を挟んで、第二部は「オホーツクの海明け」からスタート。最新曲「柘榴坂」を中心に、美しいメロディーとお洒落な歌詞の「ホテルパサージュ」や、ボサノバ風なアレンジが大人の雰囲気の「あと三日・・・」、切なさをかきたてる「この恋だけは連れてゆく」「あかね色の布団」など、心を揺さぶる楽曲が満載で、客席からは惜しみない拍手と声援が寄せられた。
トークで笑わせ、歌になると一転聞き惚れさせるという、メリハリのきいたステージ進行で、合間に客席からのリアクションも丁寧に拾い、軽妙なトークで和ませる。「命の港」で第二部を締め括った後、アンコールの「生きていりゃこそ人生だ!」では会場中から合いの手も入る大合唱となるほどの盛況ぶりとなった。
彼の人柄と巧みな話芸に引き付けられながら、コミカルな歌でも力強いメッセージを届けてくれる懐の広さと、切ない恋心を歌い上げるときの繊細さ、どちらも遜色ない、ふり幅の広い歌い手であるとともに、優れた作り手であることを示すステージでもあった。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
北海道出身及び在住のフォークシンガーたちが贈る、道新ホールでの最後のコンサートが2024年6月1日(土)開催された。出演は山木康世、佐々木幸男、みのや雅彦
ほかゲストの手風琴、工藤忠幸の5組。(主催:北海道新聞社、道新文化事業社、ミュージックファン)
1963年に開館した道新ホールが、北海道新聞社本社の移転に伴い2024年6月末で閉館、61年の歴史の幕を閉じる。閉館の6月30日まで同ホールゆかりの出演者らによる音楽や演劇、落語などで最後を盛り上げる「ありがとう道新ホール」と題した公演が予定されており、そのひとつが当夜のコンサートである。
道内出身アーティストが全国へ羽ばたいていくステップのホールとして、また今正に売れ始めライブハウスからコンサートホールでの足掛かりとして、この道新ホールは音楽ファンはもとよりすべてのジャンルの、様々なアーティストにとっても思い出深いホールに違いない。
出演の山木康世、佐々木幸男、みのや雅彦、そしてゲストの手風琴、工藤忠幸も、それぞれ幾度もこのホールのステージを踏んできた、間違いなく道新ホールの歴史のワンピースと言える。そのほとんどのメンバーがデビュー当時から取材してきた顔ぶれである。ステージ上の和やかな雰囲気もそのままに、奏でられ届けられるサウンドに身を委ねていると、これまで観てきた多くのアーティストの姿が次々と浮かんでくる。当夜ここにいないのが不思議なくらい、誰彼挙げ始めるときりがないほど。
この日は初めに山木、佐々木、みのやの三人がステージに登場し、それぞれの道新ホールにまつわるエピソードや思いなどを語りながら、懐かしい曲を披露。「元気です」「春の雨」「笑えないピエロ」「セプテンバーバレンタイン」「白い嵐」「初夏」などなど、曲が流れるたび、イントロや歌い出しに客席の反応がいちいち顕著だ。歌い上げるみのやについつられたかのように、佐々木幸男の声がいつもに増して出ている。まるで思いのたけを表すかのように。それを山木のギターが包み込む。63歳にして一番若手?のみのやが後輩役に徹して先輩を立てる。ステージは懐かしさと笑いがごちゃ混ぜになって進行していく。当夜の出演者とほぼ同年代の観客に泣く隙を与えないままに。
休憩をはさんで後半はゲストの手風琴から。三曲披露したところで、他の場所でカバーのリクエストを募ったところ一番多かったというNSPの「さようなら」を歌い、一気にあの時代へ巻き戻すと、とどめのように「惜春賦」で客席の涙腺を緩ませた。
続いて登場した工藤忠幸は山木を伴い、実はこのステージに立つのは2度目だと打ち明け、「頑張れ自分」に続いて自身が作詞した「白い冬」を作曲の山木と共に歌い、客席の感動を誘う。この後ステージには再び山木、佐々木、みのやの三人が上がり、歌や思いでを披露した後、最後はゲストも皆呼び込んで客席も一緒にホールへの感謝をこめ、「風来坊」の大合唱で締めくくった。
観客の拍手に送られながらステージを去る出演者と、拍手を送り続ける客席の間には、おなじ時代を駆け抜けた絆のようなものが存在し、たくさんの思い出を与えてくれたホールへの感謝の思いで紡がれた、ある意味一つの同窓会のような趣さえあった。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
札幌ではライラックの花が咲き始めた5月12日、歌手生活50周年を迎える原大輔の、デビュー50周年記念ディナーショーが札幌グランドホテルで開催された。
原大輔、言わずと知れた「秋冬」のヒットで知られる大歌手である。縁あって自分とはデビューのころから親交を結び、それもはや半世紀になろうとしている。初めはフォークデュオ、レイラとして、やがてソロ歌手原大輔として活躍するようになり、折に触れ、取材やステージに足を運び、また、ある時は一緒にテレビ番組を担ったりしながら、その足跡をずっと見てきた。歳を重ねるごとに味わい深くなっていく歌唱や、魅力を増していく人柄に、大人の男性としての尊敬と憧れにも似た思いを抱きながら。
もともと原の名を世に知らしめる形になった「秋冬」は昭和58年の作品だが、9人の競作となった話題の曲でもあった。その中で原の作品はことのほか北海道での人気が高く、彼のソフトな歌声が抒情味あふれる曲調とマッチして、有線でも好反響を得た。最終的には70万枚を超える大ヒットとなり、今も人々の記憶に残る名作として、原の代表作といわれる所以でもある。
この日はサブタイトルに~素敵なLOVEストーリーと共に~と銘打たれていた。それはこの50年に良いことも悪いことも含め、様々な経験をしてきたからこそ今の自分があり、今の原大輔の歌がある、とのことで、人生には予期せぬ出来事が突然起こるのをラブストーリーに例えて見せるという趣向だった。フルートの生演奏と共に、男女のナレーションで愛の物語が紡がれ、原とゲストのSinger
hiromiの歌がストーリーを彩っていく。「愛の讃歌」(Singer hiromi)「さよならを言わせて」「みぞれ雨」(原大輔)「恋人よ」(Singer
hiromi)「秋冬」「冬の扉」(原大輔)の6曲が披露され、さながら一遍のドラマを見るように、時に感動的に、また時に切なく、LOVEストーリーの世界に浸らせた。
後半は地元北海道を中心に活動を続けている、Singer
hiromiが「追憶のベッド」「100万本のバラ」「奇跡の瞬間」の3曲を披露してステージに華を添える。
続いて原が幼いころより親しんだ洋楽の中から「グリーンフィールズ」「フィーリング」を披露すると、会場にも懐かしさが伝わってくる。折しもこの日は母の日であることから、ここで母への感謝の思いを胸に「母に捧げるうた」を歌ってくれた。これには客席も染みるものがあったようで、ひときわ大きく拍手が寄せられた。そして「羅針盤」「別れの夜明け」を歌い、ラストに「これからの人生」を彼の来し方行く末を重ね合わせるように思い入れたっぷりに歌いあげると、大きな感動に包まれた観客からは惜しみない拍手が贈られていた。
アンコールではゲストのSinger hiromiと共に「キターラネロ」をデュエットして華やかにフィナーレを飾った。
全体的にシックなムードのステージで、大人が楽しめる趣向を凝らしたディナーショーだった。
一口に50年と言っても、歌い手のなかでもことに息の長い活動を続けていける、一握りの存在にしか叶えられることではない。それを地道に誠実に歩を進め、たゆまぬ努力で歌い継いできたことに大きなを感慨を覚える。この先も円熟の歌い手として、一層の感動を与え続けてくれることを願ってやまない。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
原大輔
ゲスト Singer Hiromi
Musician バイオリン杉田知子 ピアノ平岡健一、フルートMARI
ナレーション 金沢さやか、高橋慶舟
構成/演出 フロムサウンズ未來本
年頭から心痛める出来事に見舞われた2024年。昨年から続くツアーのファイナル。ここへ来てツアータイトルがいやというほど身にしみる。みのやの歌を必要としている人、助けられている人、いつにもまして世の中が荒れ、人の心が痛みに打ちのめされている時、ミスタースターダストみのやの存在は、大きく深く、そして温かく、聞くものを包んでくれるにちがいない。しんしんと雪が降る中、そんな思いで会場へ足を運んだ。
会場を埋め尽くした観客のざわめきがひとしきり落ち着くと、みのや登場。スタートは「夢しかなかった」、お馴染みの曲でみのやのこれまでの来し方が鮮やかに浮かびあがる。次にちはらさきにに書き下ろした「雪の花」で観客との距離をグッと縮め、いつもの様にウィットに富んだMCで客席は早くもみのやワールドに引き込まれていた。
「GOAL」、MCをはさんで「笑えないピエロ」と、いつのまにか心に中で一緒に口ずさんでる自分がいる。「午前0時の向こう側」、「さよならの花が咲く」、「母さん」に続き、「道」、「伏線回収」と、ギターの弾き語りやバンドサウンドで、タイプの違った作品に卓越した歌唱力と豊かな表現力で命を吹き込み、客席はこれが聴きたかったと言わんばかりの感慨無量の面持ちで一部が終了。
10分間の休憩をはさんで「がんばってね」のギターの弾き語りで二部が始まり、その後のMCでは親交の深かった故・奥山コーシン氏との想い出や、今も月刊誌「O.tone」で連載中のコーナー『星屑の自問自答』の誌面内容をみのや自身がキャラクター別に語り直すユニークな企画コーナーで大いに沸かせ、それを落ち着かせるように「天国があるなら」、続いて尾崎豊との初対面の話をした後、引き語りで聞かせた「I
LOVE YOU 」のカバー、名曲「百の言葉 千の想い」を届けると、会場に感動の波が押し寄せた。
昨年から今年にかけて惜しくも亡くなってしまったKANはじめ、谷村新司、大橋純子、八代亜紀と彼にとっても大切だったアーティストの話にも触れながらコンサートは終盤に向かうにつれ今度はノリの良い楽曲が続き、客席のボルテージは最高潮で幕を閉じた。
アンコールに応え再び顔を見せると「胸いっぱいの人生」、「傷ついた翼」、「冬春夏秋」を聞かせ全21曲を歌い切り、満場の客席に確かな満足と大きな勇気を与えてくれた。その巧みに演出・構成されたステージ進行は正にミスタースターダストみのやならではだった。
この日披露された「GOAL」の歌詞にこうある「GOALはきっと新しいSTART」。過去に負けたくない、と常に史上最高の一年を目指すみのや。昨年より今年、今年より来年と着実に前年のハードルをクリアしてきた彼にとって、より良いものを目指すのは当たり前のことだ。しかしそれは意気込みだけでかなえられるものではない。けれども、みのやというアーティストは常に目指すその先を見据え、ぶれない。だからこそ、その背中に勇気づけられ、励まされ、その歌に癒され、温められる。
今回のステージからは放射状に広がっていくパワーというより、真っすぐに同じ視線の高さから迫ってくるモノがひしひしと感じられた。ステージ上のみのやはいつも以上にスタイリッシュでカッコ良かった。
毎年リアル・ライブツアーファイナルで、前回を超えてくるみのやに出会えることが楽しみである。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
大通公園にイルミネーションが灯り、クリスマス市が始まるころ、待ちかねた夜がやって来た。星の瞬く夜に…第二幕の開幕である。
佐々木幸男、エビナマスジ、古舘賢治、泉谷さとみのメンバー4人がステージ登場し、「星に願いを」のピアのイントロが、突然聞きなれたあの曲のイントロに変わる。いち早く気づいた観客からは早くも手拍子が起こる。オープニングはなんと「愛は勝つ」だ。先ごろKANの訃報が届いたばかりだっただけに、ひときわ胸に迫るものがあり、しょっぱなからぐっと熱いものがこみ上げる。歌い終えたエビナマスジが、訃報が届くより前にこのセットリストは決まっていたと知らされ、客席からの拍手が一段と大きくなった。
この星の瞬く夜に…(以下星また)は、出演者それぞれの持ち歌はもとより、星や空にちなんだ楽曲や、数多の名曲、ヒット曲のカバーを始め、プロデューサー奥山洋充氏のチョイスによるセットリストが、え?あの人がこの歌を歌うの⁉という、新鮮な驚きと喜びをもたらしてくれる、大きな楽しみがある。というより、それが味わたい。始まる前からそわそわしているところへ「愛は勝つ」を持って来られては、しかも巧まずしてセットリストの1曲目に据えてあるとは、と期待に胸が膨らむばかりだ。
二曲目に持ってきたのはTULIPの曲とだけ明かしてスタート。待ち構える観客の耳に響いてきたのは、エビナマスジの伸びやかな高音、「青春の影」だ。瞬時にして客席はあの時代に思いを馳せる。馳せる世代が大半を占める客席に、続いて降り注いだのはブレッド&バターの「あの頃のまま」。懐かしさと4人が奏でる調べの美しさに息をのむ。
どうしてこんなにいい曲ばかりたくさんあるのだろう。そしてステージ上の4人はどうしてこんなに楽曲の持つ瑞々しさを、そのままに届けてくれるのだろう。客席は1曲ごとにそれぞれの思いを馳せ、浸っている。
ステージではエビナマスジが中心にMCを務め、和気あいあいと進行。第一夜でも感じた、温かさ和やかさが、今回もう一つ柔らかくほぐれた感がある。幸男さんがカバーについてひとくさり、他人の歌を歌うわけだから、たとえ違うと言われようと、それは物まねではない、自分の歌になるというようなことをいっていた気がする。違っていたらスミマセン。でもちゃんと幸男さんの歌になっていた「さらばシベリア鉄道」。体力使って、大変だったかもしれないが。笑わせたり、歌ったり、感心させたり、古希を超えてなお意気軒高なところを見せてもらった気がした。
エビナマスジの「夜空を見上げてため息を」、佐々木幸男の「冬列車」とオリジナル曲が続いたところへ飛び出したのは「ギンギラギンにさりげなく」。客席も一気に沸き、手拍子が鳴り響く。やはり”星また“はこうでなくちゃ、と頬が緩む。そして「冬が来る前に」で客席をクールダウンさせてくれたところへ、今回もプロデューサー奥山洋充氏からエビナマスジに与えられた課題?(前回、奥山氏の手になる楽曲「さねん花」を歌って、見事に南国の風と花の香りを会場に呼び込んだ)セットリストに組み込まれていたのは「木蘭の涙」。曲名を告げた瞬間、客席から思わず声が漏れるほど、世に愛されている名曲である。マスジの声が美しい旋律を紡いでいく。ただじっと聞き惚れていると、そのままどこかへ連れていかれそうで、切なさに胸が詰まる。それをなだめ、癒すかのように幸男さんが「蘇州夜曲」をゆったりと歌い、ぎゅっと詰まった胸をほどいてくれた。
“星また“は意外な曲のカバーを聴けるとは知っていたが、今回リクエストが上がっていると知って、にわかに胸がざわついた。それなら聞きたい曲、歌ってほしい曲のあれこれがすぐにいくつも浮かんだ。果たして披露されたのは「スローバラード」。ギターの古舘賢治の歌のうまさにもうならされるが、4人の醸し出す空気が、”星また“ならではの世界を作り上げている。実は今回、メンバーの一人が体調不良により直前になって交代するというアクシデントに見舞われている。現場の混乱もさることながら、ピンチヒッターを引き受けたピアノの泉谷さとみはさぞ大変だったことだろうが、そんなことは微塵も感じさせないどころか、元から4人のユニットであったかのように溶け込み、それ以上の効果を上げていると気づくのに時間はかからなかった。そのせいか、第一夜に比べ、一生懸命をあまり前面に出さず、むしろ肩の力を抜いてリラックスした雰囲気が漂うステージで、そのことが前回よりも大人の艶めきのようなものを感じさせ、一層味わい深いものだった。
ここからは終盤へ、佐々木幸男の「Barfly」エビナマスジの「CLASSIC」と続き、これはこの後酒宴へなだれ込むための布石か?と思わせるラインナップではあるが、とにかくマスジの歌声に合わせ、指を掲げ、スキャットを唱和し、客席も参加気分を味わう。そしてラストは前回に続き「星のかけらを探しに行こう」。福耳ならぬ、星耳でもいいんじゃないかというぐらい、息の合ったところを見せた。
アンコールでは幸男さんが「セプテンバー・バレンタイン」以来という、ハモニカまで持ち込み「氷の世界」を披露し、もう一度客席を沸き立たせると、最後は「なごり雪」で、これもお約束の天井いっぱいの星空と共に、客席全部をやさしく包み込んで第二夜の幕を降ろした。
いい曲ってまだまだいっぱいあるんだなあと、あらためて思い知らされた気がする。ワクワクドキドキが満たされ、意表を突かれるセットリストにしてやられた感が無きにしも非ずだが、たっぷりの満足感と幸福感にまみれて会場を後にする。あいにく空は厚い雲に閉ざされ、今しも雨が降り出しそうではあるが、雲の上の夜空に瞬く星々にも、きっと今夜の調べは届いたことだろう。
【2023年11月23日(木)於:ル・ケレス南円山ミュージアムホール】
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
2016年にデビュー、2020年にメジャーリリース第一弾「恵比寿」でその年、第62回レコード大賞最優秀新人賞を受賞した演歌の若手実力派、真田ナオキが、北海道初となるコンサートを、11月6日札幌・道新ホールで開催。
昼の部が完売ということで急遽夜公演も追加され、その昼のステージに足を運んでみた。
オープニングは「本気で惚れた」から。ノックアウトボイスと呼ばれるパンチの効いただみ声は苦労して作り上げたそうだが、クールな中に甘さも感じさせるルックスとのギャップに萌える女性ファンが多いのも容易に想像できる。一気に観客の呼吸をひきつけてしまった。続いて今年4月にリリースした「酔えねぇよ!」を歌うと、この曲にかける意気込みを語り、6月と10月に追撃盤もリリースしており、今年はこの曲で勝負と、念願の紅白歌合戦に照準を定めていることを伺わせた。
真田の楽曲はどれも師匠である吉幾三が詞曲共に手掛けており、師匠との間柄が偲ばれるエピソードで客席を沸かすこともたびたび。デビュー曲の「れい子」や「別れの夜明け」そしてラテンのリズム弾ける「Copacabana」など、多彩な楽曲が繰り出されると、客席も一段と熱を帯びる。
ここから客席を回るファンサービスと共に「北国の春」「噂の女」「氷雨」「勝手にしやがれ」と続くカバーメドレーを披露。本人は汗だくになりながら駆け回るのに、歌に乱れがないのはさすがというか、やはり鍛え方が違うのだろうと感じ入った。続いて師匠、吉幾三メドレー「酔歌」「情炎」「雪国」とこれまた難度の高い楽曲を、息も切らさず歌いながら客席を全てまわり、底力を見せつける。
会場を埋め尽くす観客は総じて年齢高め、女性多めながら、手製の横断幕やカスタマイズされた団扇など、手に手に応援グッズを持ち、さながらアイドルの追っかけの様。そしてライトに浮かび上がる真田の姿に向かって「ナオキ―!ナオキー!」と黄色い(?)声を浴びせながらここぞとグッズを振りかざして声援を送る姿は、まさにアイドルのそれであり、真田自身も思わず「アイドルか⁉」と口にするほどだった。
客席の呼吸を整えるように「Happy
hour」で楽しい雰囲気を作り上げると、一転、前川清の「男と女の破片」を、そして真田が昔から大好きという中島みゆきの「化粧」を歌い上げ、客席はしんと静まり返って聞き入るという、ふり幅の大きいステージ運びもなかなかで、MCも磨かれてきた感がある。
そこからは「YOKO」「罰」「酔いのブルース」と続き、真田にとっても思い出深い「恵比寿」で締めくくると、アンコールに応え、渾身の「酔えねぇよ!」でステージを終えた。
飾らない人柄を感じさせる人懐こい笑顔、恵まれたビジュアル、そして真田ナオキの声でしか作り上げられない世界が、確かにそこにはあった。夢から覚める思いで客席を後にするファンが「絶対大丈夫だよね」と口にしていたのは紅白出場のことだろう。期待を込めて、紅白も、そしてその先へも、よい結果につながることを祈らずにはいられなかった。
10月4日に同時リリースされた「酔えねぇよ︕(ZOLOME 盤)」とライブDVD 「真田ナオキ 2023 LIVE ZOLOME YEAR TOUR」も好評発売中で、勢いにさらなる拍車をかけている。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
「秋冬」の大ヒットで知られる原大輔と、道内を中心に活動するSinger
hiromiのジョイント・ライブに足を運んでみた。
実は原氏とは、フォークデュオのレイラ時代に出会ってから、もう50年近くの付き合いになる。今回、コロナ禍もあって4年ぶりの再会となったが、色んな場面でご一緒したことが走馬灯のように蘇ってきた。
ライブでは最初にSinger
hiromiが、オリジナル曲「心酔わせて」「あした天気になれ」など数曲披露したあと、原大輔が登場。「秋うらら」をオープニングに、故・谷村新司を偲んで「いい日旅立ち」「遠くで汽笛を聞きながら」、また谷村氏から提供された「冬の扉」も歌い、ひと時故人に思いを馳せた。そして「流れ雲」「とても言いだせない」「さよならを言わせて」などファンにはなじみ深い曲に続き、伊藤薫作詞・曲の「抱かれたい」や杉本真人作曲の「日暮れたら」など、手練れの作家陣による作品も披露。このほかファンからのリクエストに「北窓」「すすき野午前0時」の二曲で応えて客席を喜ばせる一幕も。最後は「つらいけど」で締めくくり、全10数曲をそれぞれの作品への思いも語りながら歌い上げた。
温かな語り口で観客のハートをつかみ、軽やかな曲では手拍子も誘い、しっとりした曲ではひたすら聞き惚れるという、まさに原大輔らしいステージ運びにあっという間の二時間だったが、その胸の底に響く低温と、張りがありながらも柔らかい高音に、会場は静まり返り、圧倒的な歌唱力に酔いしれていた。
(2023年10月24日、於:Cafe Live Bar Voice)
(お知らせ)
【原大輔&hiromi 2人のディナーShow】
12月9日(土)札幌サンプラザ1Fアバンクールで開催!(70名様限定)
お問い合わせは080-4040-2160(シミズまで)
全く予想を裏切るライブだった。9月4日にリリースしたばかりの全編シャンソンのアルバム「Scarf」の収録曲がメインのステージかと思いきや、オープニングからアカペラで松山千春の「大空と大地の中で」を高らかに歌い上げ、その圧倒的な歌唱に会場は水を打ったように静まり返る。北海道への挨拶とも取れなくはないが、道外からも駆け付けたファンにとっては、至近距離で彼のプラチナヴォイスを浴びるという、想像以上の幸せにのっけから遭遇し、戸惑う間もなく釘づけにされる幕開けとなった。
「サロン・ド・アンジェリーク」と題されたライブも9回目を数え、彼にとってもこれだけ客席との距離が近いのも初めてという、札幌のライブ・スポット「くう」は、一気に奏の世界一色となる。グランドピアノを囲むように客席がしつらえられ、手の届きそうな空間にいながら、ひとたび彼が歌い出すと、瞬く間に空へ駆け上って手の届かない存在になってしまいそうな錯覚さえ覚える。そのぐらい奏の歌唱には圧倒的なものがある。
ちょうど10年前、川上大輔として日本歌謡の名曲「べサメムーチョ」で華々しくデビューしたとき、その恵まれたビジュアルと女性歌手より高い音域を誇る美声に驚き、世間の注目を集めたのも、むべなるかなと思っていた。その彼が、昨年、奏大翔に改名し今年3年ぶりにリリースしたアルバムがシャンソン、ということは今日はどんなステージになるのだろうと思っているところへ、冒頭の一曲である。嬉しさ<驚きが正直なところだった。
しかし、相変わらず艶やかで表情豊かな、特に高音域は官能的とさえ思えるほどに怪しい魅力さえ放つ、唯一無二の声なのである。その声で、客席の呼吸を自在に操りながら、自らピアノの弾き語りで「Scarf」披露したり、布施明の「カルチェラタンの雪」や玉置浩二の「カリント工場の煙突の上に」、安全地帯の「あなたがどこかで」などのカバーも巧みにこなしたりする。ギターの伴奏で川上大輔名義の「アモーレ・アモーレ」「べサメムーチョ」「女神のリズム」の3曲を歌うと、デビューからのファンの間には懐かしさと喜びに溜息さえ漏れる。そして、最後はまた自らピアノにむかうと「マイ・ウェイ」「愛燦燦」を弾き語るという、感動的な二曲でライブを締めくくり、たっぷりと余韻を残してくれた。
二時間にわたるステージは、クオリティの高さからいっても聞き応えからいっても大いに満足させてくれるもので、彼自身も存分に楽しんでいるのが見て取れた。おそらく、この先彼が目指していくところ、思い描くアーティストの形を、具現化してみせたステージになっていたに違いない。そう思わせてくれるライブだった。
(2023年10月21日 ライブ・スポット「くう」で開催、文・内記章)
当日、行ったインタビュー動画はこちらからご覧いただけます。
オフィスナイキHP「今この人の話がききたい」
※OFFICE
NAIKI公式youtubeチャンネル
2007年11月5日「口紅哀歌」でデビュー以来、北海道を第2の故郷とするこおり健太のデビュー15周年記念コンサートが、2023年9月15日(金)札幌-道新ホールで開催された。
午前と午後でそれぞれテーマを設け、「ありがとうの唄便り」と銘打たれた昼公演は、最新曲「しろつめ草」からスタート。15年を迎えた喜びと感謝の言葉を挟みながら「北航路」、そして「泣きみなと」「恋瀬川」「風花」をメドレーで歌い、会場を温めながらステージは進行。
バックスクリーンにデビューからのジャケット写真を映し、彼の愛犬ずんたをアニメナビゲーターとして、折々のエピソードを交えながら面白おかしく紹介していくと言う趣向には、会場から大きな笑い声と拍手が巻き起こる一幕も。
中盤の「忘れ針」では客席まで降りてきて、コロナ禍では叶えられなかった、ファンとの交歓のひとときも復活させると、衣装替えを挟んでギター・折原寿一氏、ヴァイオリン・瀧本志保氏の演奏をバックに「冬椿」を、続いて「ホテル」「蜩」「望郷じょんがら」「哀のブルース」とカバーも披露して大いに客席を楽しませ、後半は「乗換駅」「肥後の盆」「夢・種まき音頭」と続けて「笑顔の宝物」で締め括った。
アンコールではデビュー曲のカップリングで、5年前にアコースティックバージョンでもリリースした「さいはて港町」をフルコーラス歌い切ると、その圧巻の歌唱に客席からは惜しみない拍手が送られ、ラストは「しあわせの場所」で会場全体を包み込むように歌い、感動の幕を閉じた。
抜群の歌唱力に加え、ファンの懐にすっと入り込む親近感のあるMCはステージをさらに魅力的な空間に創り上げている。数々のヒットを生んできた、15年のキャリアがしっかりと見てとれるステージだった。
夜公演「明日への唄心…」も大盛況裏に終了、札幌公演の模様は後日、インターネットで有料配信される【配信期間9月29日(金)~10月1日(日)】
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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