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紋別郡湧別町出身のオホーツク太郎が7月11日、札幌市民交流プラザ・クリエイティブスタジオでライブを開催した。
一読して覚える歌手名である。が、そのインパクトの大きさに負けないキャラクターの持ち主でもある。大学進学で上京すると、俳優修業した頃やシンガーソングライターとめざした時期もあったが、夢破れ帰郷。父の急逝により家業を引き継ぐと、バブルの波とその後の辛酸を味わう経験もし、再び曲つくりを始める。新たに手掛けた製塩事業を成功させ、もともと実家が営んでいた劇場「湧楽座」も再興した。落語、講談など話芸を磨きながら、本格的に音楽活動を再始動させたところへ、2013年に作詞家角谷憲二氏に出会い、「オホーツク太郎」の芸名を授かる。そして、2016年演歌歌手として全国デビューを果たした。もともとシンガーソングライター別所コータロー名義で、大人の歌謡曲を北海道から発信しようと2020年に限定リリースした作品が道内で話題を呼び、昨年新たにオホーツク太郎名義で全国発売することになったり、NHK「新・BS日本のうた」に”輝け!演歌界期待の星“の一人として出演したりと、ここへきて一段と注目度がアップしてきている。今年の4月17日にリリースした新曲「柘榴坂」を携えての札幌ライブに足を運んでみた。
左右に美しい花を配した、シックなステージ。満員の客席が今や遅しと待ち構えるところへ登場すると、一段と大きな拍手が巻き起こる。巧みな話芸でしょっぱなから客席を笑いの渦に引き込めば、あとはもうオホーツク太郎の独壇場である。この日のステージは二部構成で、第一部は「ジュエリーナイト」に始まり、「バラ色の時に・・・」「浜地蔵の唄」と続き、ここでゲストのバイオリニスト、杉田知子氏を迎え入れる。そしてバイオリンの音色と共に、札幌を舞台にした「ペルソナ札幌」を届けると、自らもギターを手にし、杉田のバイオリンと合奏しながら「ブティック」を披露し、杉田の「美しい唄」独奏で前半が終了。
休憩を挟んで、第二部は「オホーツクの海明け」からスタート。最新曲「柘榴坂」を中心に、美しいメロディーとお洒落な歌詞の「ホテルパサージュ」や、ボサノバ風なアレンジが大人の雰囲気の「あと三日・・・」、切なさをかきたてる「この恋だけは連れてゆく」「あかね色の布団」など、心を揺さぶる楽曲が満載で、客席からは惜しみない拍手と声援が寄せられた。 トークで笑わせ、歌になると一転聞き惚れさせるという、メリハリのきいたステージ進行で、合間に客席からのリアクションも丁寧に拾い、軽妙なトークで和ませる。「命の港」で第二部を締め括った後、アンコールの「生きていりゃこそ人生だ!」では会場中から合いの手も入る大合唱となるほどの盛況ぶりとなった。
彼の人柄と巧みな話芸に引き付けられながら、コミカルな歌でも力強いメッセージを届けてくれる懐の広さと、切ない恋心を歌い上げるときの繊細さ、どちらも遜色ない、ふり幅の広い歌い手であるとともに、優れた作り手であることを示すステージでもあった。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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