著作、出演、講演の他、音楽関係、各種コーディネート、及びプランニング・コンサルティングなど、弊社及び内記章への業務ご依頼は「お問合せ送信フォーム」からお寄せください。
台風10号という思わぬ伏兵の登場で、初日の開催中止という21年の歴史の中でも初めての事態に見舞われた、RISING
SUN ROCK FESTIVAL(以下RSR)。それでも二日目の8月17日は吹き戻しの風を受けながら、徐々に青空が戻り、晴天の下開催された。石狩・小樽両市にまたがる石狩湾新港樽川埠頭横野特設会場では、およそ3万7千人が8つのステージで行われる、約50公演を楽しんだ。
1日待ちぼうけを食った観客は、当初の予定より1時間早まった開場のはるか前から長蛇の列を作って臨んだ。そしてゲートのオープンとともにせきを切ったように場内へなだれ込むと、時間を惜しむようにテントサイトや物販のコーナー、レストランへと思い思いの方向へ散り、午後スタートとなった各ステージがスタートする頃には、すっかりいつものRSRの雰囲気が出来上がっていた。
急遽この日が初日となったため、SUN
STAGEの怒髪天は文字通りのトップバッターとなり、「昨日の仇を討つ」といやがうえにも盛り上げようと、褌軍団を引き連れ、テンション高く口火を切った。昨日の分まで楽しむぞと手ぐすね引いて待ち構える観客は、手を振り上げて応える。ぐんぐん上昇する気温に負けじとRED
STAR FIELDではフジファブリックが、RAINBOW SHANGRI-LAではKANがとあちこちで熱いステージが火ぶたを切る。
RED STAR FIELDではBEGINが「オジー自慢のオリオンビール」や「涙そうそう」で南国らしい空気を醸し出し、暑さのピークがそろそろ過ぎようという頃、変わって初出場のゴスペラーズが登場。ロック・フェスとしては異色の一切の楽器無し。5本のマイクの前に立った青いジャケットの5人がア・カペラで歌い出すと、一瞬にして空気が変わった。「永遠に」に始まり、ファレル・ウィリアムスの「Happy」やスピッツの「ロビンソン」などのカバーに続き、「真っ赤な太陽」では観客を巻き込んでひとしきり沸かせると「ひとり」「星屑の街」で締めくくり、存分にフェス・ファンを酔わせた。
陽が沈もうとするころ、変わってRED
STAR FIELDにあらわれたのは吉川晃司。「BE MY BABY」から「ラヴィアンローズ」へとロックなナンバーが吹き荒れ、歓声が上がる。同じ頃SUN
STAGEではWANIMAが気炎を挙げ、BOHEMIAN GARDENでは真心ブラザーズがEARTH TENTでは緑黄色社会がと、夕空が星空に変わっても、様々な音が鳴りやまず、昼間こもった熱のように音の波が大地に打ち寄せ続ける。
一旦のブレイクでひと時花火に癒されたと思った瞬間、夜空を切り裂いてELLEGARDENがSUN
STAGEでぶち上げた。すかさず待ち構えていた観客が腕を振り上げる。深まる夜へ、会場はいよいよ熱を帯びていく。「Fire Cracker」「Space
Sonic」「モンスター」と矢継ぎ早に繰り出すと観客は熱狂の渦に巻き込まれる。ボーカル細美がずいぶんと久しぶりだったからとメンバーそれぞれに挨拶を振ったり、曲が終わるごとに口々に「ありがとう」という観客に「ありがとうはこっちの台詞だよ。」と返すなど、このフェスが彼らにとっても観客にとってもいかに大切で、そこで結ばれた絆の深さも感じさせるような親密度が、ラストの「スターフィッシュ」まで熱狂と感動のステージに満ちていた。
ボーカルの細美武士はこの日あちこちのステージに出没していた。RED
STAR CAFEで行われている東北ライブハウス大作戦にBRAHMANのTOSHI-LOWとともに出演したり、 今回、初の試みとして開催期間中に奥田民生を中心にRISING
SUNのテーマ・ソングを作り、フェスの出演者にも参加してもらって、ステージで披露するという試みがなされたがそこにもあらわれた。期間は1日短くなってしまったけれど、ベースとなる部分を奥田民生が前日に作成し、フェス当日はステージを終えた出演者が次々駆けつけて、ステージ裏に作られたスタジオでレコーディングを行い、真夜中のBOHEMIAN
GARDENホッカイカンタビレのステージで最後は観客もコーラスに参加させて仕上げた。披露の段階で登場したのが細美とTOSHI-LOW。曲を試聴しながら踊りはじめたり客席へダイブしたりと盛り上げる。去り際「今から奥田民生が歌います」とTOSHI-LOWがムチャぶりしたおかげで、観客はサプライズアンコールの「さすらい」を楽しむこととなった。
そして今年のクロージングアクトであるDragon
Ashは満を持しての登場。「Viva la Revolution」でスタート。「The Show Must Go On」「Run to the
Sun」と辺りを払うような堂々たるステージングに圧倒される。新曲の「Fly Over」に続いて「Mix it Up」と骨太なサウンドが大地を揺るがすかと思えば「Rokect
Dive」のカヴァーにどよめく観客。空も白み始め「Jump」では一緒に飛び跳ね「Fantasista」では大合唱と、もはやステージと観客席がいったいとなっているところへ、本物の朝日、見事なライジング・サンが姿を現した。「陽はまたのぼりくりかえす」を聞いているとDragon
Ashこそがこの場にふさわしいアーティストだと思えてならなくなった。そしてまたしても細美が登場してアンコールを促す。Kjの弾き語りで「日曜日よりの使者」さらに細美とTOSHI-LOWも加わって「青空」を披露して、朝を迎えた。
今回、初日の中止で、トップバッターを務めるはずの常連の東京スカパラダイスオーケストラや、これが17年ぶり復活第一弾のステージとなるはずだったNUMBER
GIRLはじめ、おそらく多くの観客やアーティストが涙をのんだステージもあった。それでも、開催にこぎつけた17日から18日の夜明けまで、全力でパフォーマンスを届けるアーティストと、全力で楽しむ観客、サポートするスタッフ、その不屈の闘志とでも言うべき熱意が奇跡のように見事なライジング・サンを呼び込んだように思えてならない。来年の約束をこの地に結んでそれぞれの日常へと帰って行くエゾ・ロッカー達の想いは、22年目へと脈々と受け継がれて行っている。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
サブコンテンツ:| 個人情報保護について || このサイトについて |