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「北海道の夏の風物詩となった野外フェス、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO (以下RSR)が、北海道小樽市、石狩湾新港埠頭横野外特設ステージで8月16日、17日の二日間開催された。
15回目となる今年は、初日雷や竜巻など大方の天気予報を気持ちよく裏切って、ぱらつく小雨が上がると、雲間から顔を出した夏の日差しが照らす石狩の浜に、フェスの幕が切って落とされた。SUN
STAGEのトップバッターは、アーティストや観客のみならず今や国民的アニキとなった増子直純の率いる怒髪天。今回は怒髪天RSR石狩鍋Specialとしてホーンやコーラス、ダンサーの他、鍋の“具材”にレキシやSCOOBIE
DOも加わる豪華にして賑やかな幕開け。アニキの「ビール日和だぜ!」の声に観客は拍手喝采。沸騰する石狩鍋ならぬステージで熱いフェスのスタートを盛り上げた。
EARTH
TENTではクリープハイプが口火を切って、続くグループ魂は予想通り(?)「あまちゃん」ネタでスタート。陽気なオープニングテーマと下ネタ満載のトークにテントを幾重にも取り囲んだ観客までがどっと沸く。そして襲いかかるサウンドで一瞬のうちに周囲を躍らせ、地面を揺るがせる。
暮れなずむRED STAR FIELDでは奥田民生が早くもほろ酔い加減でステージに上がり、陽の落ちたBOHEMIAN
GARDENでは“あの”と言いたくなる贅沢な顔ぶれ、完熟トリオ(小坂忠、鈴木茂、中野督夫)がプロコルハルムの「青い影」やビートルズの「カム・トゥゲザー」をこともなげに弾き歌い、ゆったりとした空間でこの上ない寛ぎを堪能させてくれる。
周辺の森が夜の帳に包まれRAIBOW
SHANGRI-LAからはCharaの声が闇を裂いて辺りを震わせる。夜も深まる頃、SUN
STAGE では仲井戸“CHABO”麗市Friday Night Sessionが行われ、武田真治、中村達也らの熱いプレイに加え、奥田民生がCharが、増子直純がと次々アーティスト達が加わり、全員で「雨上がりの夜空に」を熱唱という豪華な競演もあった。Charと奥田民生あたりは参加できるステージに軒並み顔を出していそうだ。
深夜のお楽しみはおなじみの稲川淳二に始まり、EGO-WRAPPIN、RISEらのステージがキャンパーズを楽しませ1日目が終了。
明け方近くに土砂降りが訪れ、2日目の天気が心配されたが、各ステージでは一番手が発進。KEMURIが、気炎を上げ、back
numberや渡辺美里も熱いステージを展開。
それぞれの観客も熱を帯びてくる。やがて雨が上がりはじめる頃、SUN
STAGEに夏フェス初参戦のMISIAが登場。「つつみ込むように・・・」の歌いだしの高音が空に駆け上がると会場にどよめきが走る。雨に洗われた会場に涼やかな風と共にサウンドが流れ込む。スケール感あふれる歌唱は野外フェスにうってつけだ。ダンサブルな曲が続いた後「Everything」では一転、広い会場が静まりかえり、圧倒的な歌唱に魅了された観客の間に、じわじわと感動が広がるのが手にとるようにわかる瞬間でもあった。
ストレイテナー、東京スカパラダイスオーケストラ、サンボマスターらが続々と熱演を繰り広げる中、RED STAR
FIELDでは細野晴臣が円熟味というよりもっと軽やかな、角のとれた大人の味わいを漂わせるパフォーマンスで観客を酔わせていた。
今年のRSRは6つのステージに99組のアーティストが登場し、思い思いのパフォーマンスで二日間、延べ約5万7千人の観客を楽しませた。
夕闇せまる空から、こらえ切れずにまた雨が落ち始める。雨男、初出場の小田和正がSUN
STAGEに表れる。アコースティック・ギターの音色とともにあのハイ・トーン・ヴォイスが響き渡る。「たしかなこと」「グッバイ」に続き、「ラヴ・ストーリーは突然に」のイントロが会場に流れた途端、「うわぁっ」という歓声が会場を取り巻くサイトやブースからも立ち上り、皆が一斉にステージに惹きつけられる。雨足は強くなってくる。しかし誰も立ち去らない。次々に名曲を繰り出す小田。手を振る人、一緒に口ずさむ人、聞きいる人、それぞれがかみしめるように一つ一つの曲を味わい、深い余韻が会場に立ち込める。いつしか雨足も遠のいた。
一方同じ頃RED STAR FIELDでは、ファンがいつ、どこで、と待ち望んだ恒例のEZOISTのステージが進行していた。そしてあちこちで真心ブラザーズ、ハナレグミ、バンバンバザールらのステージが一区切りしたころ、今回初企画のウェディングがRED
STAR FIELDで始まった。公募で企画参加を呼び掛け、応募した67組の中から決まった一組のカップルが、増子直純を牧師役に、見守る観客の祝福をあびながら結婚式を行った。今回ばかりは恒例の花火も結婚祝福に花を添える形となったようだ。
花火ブレイクの後はいよいよ終盤。マキシマム ザ ホルモン、UNISON SQUARE GARDEN 、Char、The Birthday、くるり、キセルといわば常連組のアーティストが目白押しで、観客が見たいステージのかぶりを嘆く声も聞こえる。こういうフェスの宿命と言ってしまえばそれまでだが、苦しい選択も醍醐味の一つととらえるべきだろうか。
SUN
STAGEのSCOOBIE DOは本当に年々パワーアップしてきたのがわかった。演奏が始まると次第に人が吸い寄せられるように集まり、いつのまにか大勢の観客に取り囲まれていた。そして今年の大トリはMONGOL800。ライジングと同い年の15周年を迎えた彼らが、会場をひとつにして朝を迎え、2013を締めくくった。
終わってみれば、天気も一時的に崩れた時間帯はあったものの、概ねフェスが楽しめる状況は守られたようだ。今回で15回目ということは、リピーターの中にはアラフォーもしくはそれ以上の世代も増えてきているに違いない。テントサイトも増え、家族連れの姿も目立つようになってきた。そうした中、完熟トリオや細野晴臣ら日本のロック草創期を支えた、いわば極上の腕を持ったアーティストが現役で、新進気鋭のアーティストと同じフェスに参戦しているのを見るにつけ、日本のロックもここまで来たんだなあと感慨深いものがあった。Charのステージに息子であるRISEのギター&ボーカルのJESSEや福原美穂が出たり、音楽が世代を超えて愛され受け継がれていくのを目の当たりし、やはり音楽は広く人の心を繋げていくことを改めて実感したフェスでもあった。
ライジング2013観戦記のリポート=ノーザン・エンタメ・アイズの簡略版が
オリコンwebサイト「ORICON STYLE」にアップされています。
こちらから
(文:音楽ジャーナリスト 内記 章:2013年8月19日)
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