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今年の音楽業界の傾向としては、まず何と言ってもAKB関連グループを始め、ももいろクローバーZ、モーニング娘。などのヒットチャート常連組女性アイドルグループの活躍が、昨年に続き顕著であったことがあげられる。AKB48はオリコン年間ランキングによればシングル14作連続ミリオンを達成し、それまでのB’zの記録を抜いて歴代1位となった。5月発売の「さよならクロール」は199.5万枚を売り上げ、年間シングルセールス1位を獲得、4年連続1位の記録も達成した。また、年間アルバムセールスでは嵐の「LOVE」が79.7万枚でトップを飾り、音楽DVD他関連商品も含めたアーティストトータルセールスでも嵐が1位を獲得した。そうした中で今年新たな動きとしてあげられるのは、可愛い、親しみやすい、会いに行ける、歌える、踊れる、演技もできる、バラエティもできるといったこれまでにもみられたアイドルグループの多面性はそのままに、EXILEのDNAを受け継ぎ、よりダンスパフォーマンスに比重を置いたE‐girls、メタルとの融合を目指したBABYMETAL、ガールズロックユニットと銘打ったPASSPO☆など、楽曲、パフォーマンスへの本物志向が強い女性アイドル・グループが出てきている。
また、ご当地アイドル、地下アイドルといった存在も目を引いた。一方男性アイドルでは先の嵐を筆頭に関ジャニ∞、Kis-My-Ft2らジャニーズ勢が相変わらず強かった。また、5年振りに復活したサザンオールスターズはじめ、B’z、Mr.Childrenらビッグ・ネームも健在ぶりを示した。
この中にあって今年一大勢力として頭角をあらわしたのは、アニソンである。ヒットチャートにおける勢力分布図が塗り替えられてきている。アイドル台頭の上位チャートにここ数年アニソン、声優アーティストの作品が食い込んでくることが増えてきていたが、今年オリコンの週間シングルトップ10に、アニメタイアップシングルが入らなかった週が数えるほどしかない、という席巻ぶりを示したのである。これはゲームから派生した作品のアニメ化に伴う「THE IDLM@STER」関連や、紅白初出場も決めた音楽ユニットLinked Horizonの「紅蓮の弓矢」を始めとする「進撃の巨人」関連作のヒットなどがあげられる。
一方演歌・歌謡曲では今年、島倉千代子、藤圭子というおおきな二つの星を失ったが、明るい話題がなかったわけではない。もはや中堅どころとして演歌界を牽引する存在となった氷川きよしが有線大賞を受賞すれば、登場こそセンセーショナルではなかったものの、強力な新人としてこちらも紅白初出場組福田こうへいがあらわれた。昨年10月発売の「南部蝉しぐれ」がじわじわと売り上げを伸ばし、今年の演歌部門では最多の売り上げを記録、演歌ならではのロングセールスに見る底力を感じさせた。
この他、テレビの番組企画から生まれたj-popを日本語で歌う外国人が、圧倒的な歌唱力と日本語詞への理解力で注目を集め、クリス・ハート、ニコラス・エドワーズらプロ・デビューを果たしたのも今年のひとつのムーヴメントとしてあげられる。この派生効果として、j-popの良さを見直す、一つのきっかけとなった。
もうひとつテレビ番組からNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が人気を博し、小泉今日子が役名で歌った「潮騒のメモリー」がヒット、劇中でとりあげられた80年代のアイドルソングも再注目され、ちょっとしたブームになった。
音楽ビジネスとしては、昨年に比べ海外でライブツアー行うアーティストが増え、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、VAMPS、ONE
OK ROCK等多くのアーティストがツアーを開催。中でもVAMPSやPerfumeのように海外でCDリリースを行うケースも出てきて、ビジネスとして一歩踏み込んだ段階に入ってきた。
CD不況が長びく中、音楽ビジネスを支える大きな柱として、ライブエンタテインメント市場が伸長してきている。コンサートプロモーターズ協会によれば、過去最高だった昨年の年間2万公演、観客動員数3000万人を、今年はさらに上回ることが確実と言われている。傾向としては大型野外フェスをはじめスタジアム、アリーナクラスの「大規模公演の増加」とプロジェクションマッピングや通信制御型ペンライトなどの「演出の多様化」などがあげられる。
振り返って北海道関連を見てみると、サカナクションが3月に発売したアルバムがデビュー6年目にして初のオリコン1位を獲得、NHK紅白初出場も決めるなど大活躍、またGLAYが故郷函館で、7月に凱旋野外ライブ2DAYSに5万人を集めたほか、JOIN
ALIVE、RISING SUN ROCK FESTIBAL の野外フェスも順調に回数を重ね、成長を続けるフェスとして音楽ファンに愛されながら、北海道の夏の風物詩として定着している。
新人では5月に演歌の杜このみが札幌からデビューし、民謡そだちの喉で将来性を感じさせた。また札幌在住の女子5人組ブルーズロックンロールバンドDrop'sも9月に、結成10年のスモゥルフィッシュが10月に、テレビでお馴染みのブギウギ専務こと上杉周大率いるTHE
TON-UP MOTORSが12月にメジャーデビュー、2014年には爆弾ジョニー、FOLKSのメジャーデビューも決定しており、さらなるシーンの盛り上がりを期待したい。
昨今ではSNSを駆使したヒットの発火など、メディアの進化とともにヒット誕生のパターンも多様化してきている。一方、良いものを見直すという傾向も年々強くなってきており、楽曲の質が問われる時代でもあると言える。加えてアーティストだけではなく、新たな才能を持つクリエイターの存在が脚光を浴びた年でもあった。これらのことから、総合的に見て、音楽の多面的発展を見据えたエンタテインメントの時代が到来してきているのを感じる。これから送り手の側はより斬新な発想力、企画力が求められることになるだろう。それがとりもなおさず音楽業界全体の活性化や発展につながっていくと信じたい。
(文:音楽ジャーナリスト 内記 章:2013年12月15日)
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