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好天に恵まれた8月15,16の両日、石狩の大地でライジング・サン・ロックフェスティバル2014イン・エゾが開催され、80.5万平米の敷地内に設置された7つのステージに110組を超えるアーティストが出演。二日間で延べ6万人(15(金)27,000人、16(土)33,000人、主催者発表)の観客が多彩なパフォーマンスに酔いしれた。
初日、入場口前の特設ステージにSCOOBIE DOが登場し、シークレットのウェルカム・パフォーマンスにいきなり観客のテンションもあがる。サンステージではトップバッターのレキシが「きらきら武士」汗だくで煽れば観客も「武士、武士、武士」と腕を振り上げる。怒髪天の増子直純ら多彩なゲストも交えての賑やかなステージは天気同様、気分上々の幕を切って落とした。
レッドスターフィールドにはカーネーションとともに森高千里が登場。懐かしい「17才」を聞かせれば、アーステントでは木村カエラがキャパの倍以上の観客を熱狂させ、どちらも華やかなオーラを放つ。 メインのサン・ステージでUNICORN、ケツメイシ、電機グルーヴが次々と気炎を上げる一方、レインボー・シャングリラでは→Pia-no-jaC←がDAISHI DANCEとともにフロアの外にあふれた観客まで踊らせ、レッド・スター・フィールドではThe
Birthdayが夜の闇さえ照らし出すかのような熱いステージを繰り広げる。そしてデフ・ガレージに登場したシーナ&ザ・ロケッツは、序盤観客のリアクションを確かめるような素振りを見せたかと思うと、魚信がきた釣り竿を一気に引き絞るかのように、ライブの空気を一瞬の呼吸で自分のフィールドにぐいーっと持って行くのを目の当たりにし、流石の技に舌を巻いた。
深夜になりキャンパー向けのプログラムでは、普段なかなか見られない贅沢なセッションが行われ、OKAMOTOS、奥田民生、チバユウスケ、甲本ヒロト、真島昌利、シーナ&ザ・ロケッツ、仲井戸“chabo”麗市らがかわるがわる迫真のプレイでぶつかり合い、溶け合い、見事なロックンロール・ショーを展開、フェスならではの醍醐味を存分に味わわせてくれた。
二日目は北海道出身の爆弾ジョニーがオープニングアクトを務め、サンステージはエレファントカシマシからのスタート。この日も氣志團が沸かせ、9mm
Parabellum Bulletが音の連射砲を浴びせかけ、と息つく暇もない。アーステントではゲスの極み乙女。が、デフ・ガレージではテスラは泣かない。がそれぞれ活きの良い音を響かせている。レインボーシャングリラではavengers in sci-fiがそしてボヘミアンガーデンではKen
Ken、ムッシュかまやつ、山岸竜之介feat金子マリという10代から70代までが世代を超えたご機嫌なプレイを披露、奏でるファンキーなサウンドが観客を喜ばせた。
この日レッドスターフィールドでBEGINの歌声に癒された後、隣接するレッドスターカフェに登場したのがT字路’sという男女のユニット。しゃべる声からは想像しにくいハスキーなダミ声と巻き舌で、がなりたてるようなブルースを聞かせる。ウェットな部分とドライな部分が不思議に調和して、爽快感すら漂う独特の世界を創り上げ、落日とともに強烈な印象を残した。
陽の落ちたレッドスターフィールドには憂歌団が観客と罵声を浴びせ合う掛け合いの様な楽しいステージを終え、しばし花火ブレイクとなる。
サン・ステージ夜の部スタートはONE OK ROCKから。アーステントは初登場のキュウソネコカミ、レッド・スター・フィールドはUAが、そしてデフ・ガレージには帰ってきたeastern
youthがと、盛り上がり必至のラインナップ。ここから夜明けまで一気にフェスは突っ走る。Dragon
Ashがサン・ステージに、そして山下達郎がレッド・スター・フィールドに満を持して表れる。ステージ前はおろか通路からレストランブースの前まで人だかりでぎっしり。4年振りの達郎は「アイ・ラヴ・ユー」のアカペラに続いて登場すると「ビッグウェーブのテーマ」でスタート。「ミッドナイトはシュガーベイブ以来39年振り、61歳にこんなことさせるなよ、若林。」とぼやきながらも、今聞いてもらいたい理由も含め、30年振りに披露するという「The
War Song」や大瀧詠一の曲などもさらりと聞かせ、「来年はぜひ昼間に来たい」との言葉を残してステージを終えた。
日付けが変わって深夜のサンステージにはサカナクションが「ただいま」と登場。5回目となるライジングだが、そのたびに成長の足跡を伺わせるステージに観客も釘付け。会場をダンスホールに変え、サカナクション一色に染め上げた。
そして3時半、まだ暗い空の下に今年の大トリ、フィッシュマンズが登場。原田郁子をボーカルに迎え、「ナイトクルージング」でスタート。そして空が白み始める頃、今度はUAも登場しマイクを手にする。どんどんあたりが明るくなってくる。そしてアンコールではついに朝日が顔を出し、気付けばステージ上には東京スカパラダイスオーケストラのメンバーの姿も見える。誰もが等しく朝日を迎える喜びと感動を共有した瞬間だった。
フェス全体を振りかえって見れば、粗削りながら様々な可能性を伺わせる新進気鋭のアーティストが今年も多数登場した。また、脂の乗り切った、旬の勢いが止まらないアーティストはステージ上でそのパワーを爆発させる。そしてベテラン勢は手練の技で一気に観客の呼吸をさらっていく。各人各様のステージングは、アグレッシブだったり、ほんわかまったりだったり、ぴりっとスパイシーだったりとそれぞれが味わい深く、楽しみ方も一様ではない。観客の年齢層も広がり、年配層や家族連れも一段と増えたようだ。フェスが観客を育て、観客もまたフェスを育てながら、年々歴史のページを増やしていく。それは音楽だけではなく、ひとつの文化の進化でもあると思う。
(文:音楽ジャーナリスト 内記 章)
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