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今年の夏も石狩の地に熱いフェスが帰って来た。
今回で19回目となるRISING SUN ROCK FESTIVAL2017in EZOは9年ぶりに入場券がSOLD OUTとなり、8月11,12日の両日曇天と雨に見舞われる中、空模様など意に介さぬEZO
ROCKER達を集め開催された。
今回の初日、最初にSUN
STAGEに登場したのは10-FEET。2015年の大トリを務めた彼らが今回はトップ・バッターに躍り出た。最前列に陣取っていたファンに、激しいパフォーマンスだから怪我の無いよう呼びかけたが、しょっぱなから客席がモッシュ、ダイブ、サークルと一気に加速しかけた時、巻き込まれて倒れたファンを救出するため即座にストップをかけた。あらためて仕切り直したがテンションの高さは失われることなく、観客は彼らのシンプルだが力強いパフォーマンスを全身で謳歌し、見事にフェスの幕を切って落とす役目を果たした。
時折小雨がぱらつく中、RED STAR FIELDではチャラン・ポ・ランタンが元気良くカラフルなステージで盛り上げ、RAINBOW
SHANGRI-LAでは清水ミチコが初のソロ・ステージを力みなく務め、場外にまであふれた観客を沸かせている。大小様々なステージでいくつものパフォーマンスが繰り広げられ、会場全体が熱を帯びてくる。
夕刻、出演決定時から話題を呼んでいたB'zがSUN STAGEに登場。他のステージに出演するアーティストからもリスペクトのコメントや歌いじりが続出する中、会場に詰めかけた観客のどよめきを前に、堂々の登場にはあたりを払うような気配さえある。「さまよえる青い弾丸」からはじまり、稲葉の声と松本のギターが一瞬にして場内を惹き付け、縛り付けて離さないかのようだ。ステージ上のB'zの一挙手一投足、緩やかなMCやコール&レスポンスにさえタメ息がもれるほどの魅了されようで、とうとうラストの「ultra
soul」ではステージからはるかかなたのテントサイトや通路までびっしり埋め尽くした観客がいっせいに「ウルトラソウッ」「ヘイ!」とジャンプして石狩の大地を揺るがせた。雨男の異名にたがわぬびしょぬれのステージとなったが、ライジング史上最高観客動員数を記録したのではと思わせるほど、別格のオーラを感じさせた。
この日は初出場のUVERworld、常連組のレキシと続くSUN STAGEのラインナップに、ここから動けないファンも多かったのではと思わせたが、ストレイテナ―、チャットモンチー、夜の本気ダンス、Charaとあちこちで足を運びたいステージが重なり、選ぶのも一苦労。毎年のことながら、嬉しい悲鳴をあげることになる。
深夜になってBOHEMIAN GARDENで開かれるキャンパー向けプログラム、Song for”ムッシュかまやつ”~LIFE IS
GROOVE~というステージに向かった。今年の3月1日におしくも亡くなったムッシュかまやつは過去3回ライジングに出演しているが、最近ではRIZEのベーシストでもあるKenKen・ムッシュかまやつ・山岸竜之介の3人で結成したLIFE
IS GROOVEで2014年に登場している。ムッシュを偲んで、KenKenをホストに縁のアーティスト達が集い、名曲の数々を届けるというので来てみれば、リハの段階からただならぬギターの音色が聞こえ、ぞくぞくしながら待っているとChar、奥田民生、斉藤和義といったギター侍たちをはじめ、シシドカフカや金子マリという贅沢な顔ぶれが次々と現れた。ムッシュの「あの時君は若かった」「どうにかなるさ」「ノー・ノー・ボーイ」「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」などに加えオールドファンには懐かしい「エレクトリックばあちゃん」「フリフリ」も披露され、ラストは「バンバンバン」で会場一体となり大盛り上がり。ステージからも会場からも全員が立ち去り難く、リフレインのように何度も「バンバンバン」を繰り返し、世代を超えて音楽の魂を繋いでくれたムッシュに感謝して追悼の時を共有した。
同じ夜、RED
STAR FIELDでは東京スカパラダイスオーケストラがピーター・バラカンをMC/DJにチバユウスケや中納良恵ら多彩なゲストを交え、スカの歴史を紐解くセッションを繰り広げていた。
二日目は朝から雨脚が強く、場内は早くもぬかるみ田んぼ状態になる箇所も出現し、ステージ感の移動にも時間がかかるし、気温も一気に下がり、体力的にもタフなフェス現場と化した。
「雨、止めー」とSUN STAGEに登場したのはWANIMA。とびきり活きのいいサウンドに観客も泥も雨もいっしょくたに飛び跳ねる。F-BLOODや岸谷香、ユニコーン、back
numberといった大人のサウンドや常連組のステージへ、あるいはSHISHAMO、フレデリック、尾崎世界観(クリープハイプ)といった若手のパフォーマンスへ思い思いの足を運ぶ観客の足を止めさせたのはSUN
STAGEの久保田利伸。ファンキーで、グルーヴィ―な空間をと初めてのライジングを全身で楽しむかのようにゆったりと「LA・LA・LA
LOVE SONG」を歌うと寒さや疲労でダメージを感じ始めていた観客の中に再び音楽が戻ってくる。この日はWANIMAもカバーしていたけれど、久保田も松山千春の「大空と大地の中で」をレゲエのリズムに乗せてカバー。どっぷり北海道に浸ったステージを観客とともに自らも大いに楽しんだ模様。
この日、RED STAR FIELDの斎藤和義、BOHEMIAN GARDENのさかいゆうfeat,福原美穂
SOLAR JAMはそれぞれ胸に染み入るような味わい深いステージを展開。ずっと聞いていたくなるような心地良さだった。
夜が深くなるころになっても、雨は止む気配がない。しかしステージはAlexandros、CORNELIUS、マキシマム
ザ ホルモン、Suchmosとどこも観客の熱は冷めることを知らない。RIZEのステージにはCharや金子マリもゲスト出演し、親子競演となる。
そして銀杏BOYZがRED
STAR FIELDを、MONGOL800がEARTHTENTを締めくくる中、SUN STAGEにはくるりが登場し、懐かしい曲も含め15曲も披露。最後はアンコールの「ロックンロール」でクロージング・アクトを無事努め上げ、朝日こそ見られなかったものの空が明るくなるころには降り続いた雨も上がった。
若手のアーティスト達の間には「いつかはライジング」というステージへの憧れや目標があり、それが叶って登場する時の喜びや感慨がパフォーマンスに満ち溢れて、それがまたアーティストの魅力を倍加させる効果を上げているようにも見て取れる。今回のライジングで感じたのは、ベテラン、中堅、常連、若手と幅広い世代の新旧アーティストが一堂に会するチャンスを逃すことなく、セッションやコラボでいい刺激の交歓を行っている事。それがステージ上で自身も楽しみ、観客も楽しませる相乗効果を生んでいる。そこで起こる化学反応は、アーティスト達の無限の可能性を引き出すきっかけでもあり、観客にとってはそこでしか見ること聴くことのできない、唯一無二の瞬間である。そしてそれこそがライジングの醍醐味であり、受け継いでいく音楽の魂をアーティストと観客で共有する至福の時間であり空間であるということだ。だからこそずっと続いて行って欲しい、大切なフェスティバルなのだということを、再認識する2017年のライジングだった。
※『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』観戦記がORICON NEWSに掲載されました。こちらから
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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