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8月11日、12日、今年で23回目を数えるRISING SUN ROCK FESTIVAL(以下RSR)がやっといつもの形で帰ってきた。1999年の開始以来、2019年に台風で初日の中止を余儀なくされ、2020、2021年をコロナ禍で奪われ、昨年はステージを3つに絞りマスク着用、歓声自粛などウィズコロナの対策を講じた特別な形のフェスを開催したが、今年は5つのステージに76組のアーティストを迎え、全力で音楽を楽しむ二日間を取り戻した。
開催中の気温はRSR史上最も高かったかもしれない。しかしフェス日和ともいうべき晴天に、早くもエゾロッカー達の興奮度はうなぎのぼり。開場前のSCOOBIE
DOのドラムMOBYの挨拶にも、待ちきれない観客のボルテージは上がる一方。強い日差しは容赦なく照りつけるが、それを上回る熱で、音楽と太陽を迎え入れた。
初日のステージはCreepyNuts、SHISHAMO、サンボマスターらからスタート。マスクから解放され、ステージに向かって遠慮なく歓声を上げ、タオルを振りまわし、歌い、踊り、跳ねる。それを受け止めるアーティストも、これでもかとパフォーマンスを浴びせ返す。全身で音楽を楽しむ喜びがステージの上でも下でも爆発している。10‐FEETはSUNSTAGE(以下サンステ)で暴れた後、RED STAR FIELD(以下レッド)の東京スカパラダイスオーケストラ(以下スカパラ)のステージにも登場(乱入?)、「カナリヤ鳴く空」「閃光」をコラボ。スカパラのステージにはほかにもエレファントカシマシの宮本浩次やハナレグミ、マキシマムザホルモンのナヲが登場して、フェスならではのパフォーマンスを存分に味わわせてくれた。
EARTH TENTでyamaが,サンステで電気グルーヴがそれぞれの世界で観客を包み込む頃、陽が落ちたレッドに登場したのは22年ぶりに再集結したTHE STREET SLIDERS。デビュー40周年を迎えた彼らの「のら犬にさえなれない」を聴いていると、円熟や渋味というより、攻めの姿勢を失わないロッカー達だなと改めて認識させられる。スローなナンバーでも、アグレッシヴなロックンロールでも自在に観客を酔わせた。初日のサンステを締めくくったのはbacknumber。
「アイラヴユー」に始まり、「クリスマスソング」や「高嶺の花子さん」などヒット曲満載で大盛り上がり。寄り添う曲を届けてくれる彼らと「いい夏にしてね」の清水依与吏の言葉に会場は一つになって、アンコールの「瞬き」を合唱。空には星が瞬いていた。
二日目も朝から晴天。気温もグングン上昇。ケツメイシで上がり、MONGOL800の「小さな恋のうた」で大合唱し、テンション高くフェス熱があふれているが、昨日とは打って変わって、猛暑の中にもコロナ禍以前のフェスの空気を取り戻したかのような落ち着きが感じられた。さすがに昨日は浮足立つのを止められない、前のめりの感覚があったが、存分に声を出し、体を動かしてみて、熱中症寸前で自分にブレーキをかけ、一晩過ごしてやっといつものフェスを楽しむ余裕が蘇ってきたようでもあった。昨年、コロナで涙をのんだカネコアヤノは、今年元気に雪辱を果たすことができた。
日が少し傾いてHygge STAGEに登場したのは地球三兄弟(奥田民生+真心ブラザーズ)、西日に文句を言いながら、時間帯まで選べる権力は持てなかったと笑わせ、緩やかにライブを展開。そもそもステージ名の「Hygge」とはデンマーク語ので「楽しい」という意味をあらわし、まさにぴったりのパフォーマンスだ。ときおり吹く風が少しずつ雲を運んできて、真っ青だった空がオレンジ色に染まるころには、その後を受けた尾崎世界観が観客に座るよう呼びかけ、夕日に包まれながら弾き語りでよく通る優しい声を響かせていた。
同じころレッドでは初出演のスキマスイッチがステージ前どころかステージを設営したフィールド一帯すべてを埋め尽くす観客を前に、大橋卓弥の声を隅々までいきわたらせる。詰め掛けた観客と「全力少年」の大合唱し、ラストの「奏」は夕空の美しさと相まって、この曲を聴くのにこれほどふさわしい時間があるだろうかと思えるくらい、心に沁みた。サンステのBABYMETALも期せずして「きれいな夕陽を見て」と観客に呼びかける一幕も。こういう自然と音楽のたくまざる融合が野外フェスの醍醐味でもある。
花火ブレイクのあと、サンステにあらわれたのはMISIA。「陽の当たる場所」で10年ぶりの登場。待ち構えた観客を前に「MISIAも負けないぐらい大きな花火上げたいと思いまーす」と煽り、「つつみ込むように…」のハイトーンボイスが響き渡ると会場がいっせいにどよめく。圧倒的な歌唱力ですべてをなぎ倒す勢いに、観客はすっかり引き込まれている。そしてキーボードがステージに運ばれ、拍手の練習をして迎えたのはスペシャルゲストの矢野顕子。「音楽はおくりもの」「ひとつだけ」「希望のうた」の三曲が、二人の極上のハーモニーで届けられるという贅沢を味わった。そして「アイノカタチ」を歌い上げるとサプライズゲストに、寺岡呼人がプロデュースし元男闘呼組のメンバーを中心とするRockon Social Clubを呼び入れ、ラグビーW杯のテーマソング「傷だらけの王者」を披露。圧巻のステージとなった。
夜が深くなると昼間の暑さが嘘のように静まり、過ごしやすくなったロッカーの動きもここから朝日まで、と貪欲になる。心配されたボーカル渋谷龍太の喉の調子も回復してサンステに登場したSUPER BEAVER。「真面目に音楽やってます。」「持ちつ持たれつの関係がいい」と、どこまでもロックな発言。復活の喜びとバンドをやっていて良かった、ライブ最高との気持ちがあふれるステージに、気骨のあるバンドマンの姿を見た。
日付が変わり、Hygge STAGEにはkroiが登場して観客を踊らせる。心地よいサウンドとソウルフルな歌声が深夜の空気を揺るがせ、ファンクに浸らせてくれる洒落た空間を作り出していた。このころから時折ぱらつく雨。朝日の心配がちらと頭をかすめる。しかしサンステのVaundyがステージから放たれれるスモークと光の中「恋風邪にのせて」でスタートすると、そんな心配もどこへやら、夢中でパフォーマンスを貪る。去年のコロナでVaundyが出演キャンセルになった時、代打を引き受けた藤井風が「Vaundyでーす(笑)」と登場して、Vaundyメドレー(踊り子~恋風邪に乗せて~napori~東京フラッシュ)を聞かせてくれたのに対し、藤井風の「何なんw」をフルカバーで返礼、これには観客も大興奮。一年越しの恩返しは音楽ファンの胸を熱くするシーンでもあった。
今回リベンジ組はVaundy、カネコアヤノだけにとどまらず、2019年の台風で出演キャンセルになったドレスコーズも、この日def garageのしんがりを務め、明けゆく空に向かい、きっちり雪辱を果たした。
そしていよいよオオトリ。雨も上がり、今年のクロージングアクトはマカロニえんぴつ。「自分を好きになるための旅をやめないで」と「その旅のお供は自分たちが担う」との言葉は、深い歌詞とともにオーディエンスの心に届いたと思う。そして力強いパフォーマンスは朝焼けの空と共に石狩の大地に降り注ぎ、音楽を愛するエゾロッカー達の心を一つにして2023年のRSRを締めくくった。
8月11日、12日の二日間、晴天の予報は有難かった。けれども、日本中を襲った猛暑が北海道にまで及び、連日30度超えの熱さに見舞われるという、タフなフェスになった。これまでにもどろどろの田んぼフェスや極寒のフェスなど過酷なフェスは幾度もあった。そのたびにスタッフはスコップ持って場内を走り回り、泥だらけになって排水溝を掘ったり、あるいは焚火を絶やさないようにしたりと奮闘してきたが、今回は熱中症対策の呼びかけに懸命だった。余りの暑さに食中毒警報が出たほどで、フェス飯を楽しみにしているロッカー達にも注意を促す一幕もあった。
しかし、毎年こうやってフェスを終えるたび、また一つ音楽を愛する理由が増えた気がするのは、毎回素晴らしい音楽体験を積み重ねていっている実感が確かにあるからだろう。そして、もうすでにRISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZOへのカウントダウンが始まっていることの幸福感が、363日後につながっていることを、エゾロッカー達は知っている。
開催期間:2023.8.11(金・祝)、12(土)
総入場者数:64,000人<11(金・祝):32,000人/12(土):32,000人)
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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