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3月4日、札幌のザ・ルーテルホールで65歳の誕生日を迎える五十嵐浩晃が、バースデー・コンサートを開いた。2年前にはアルバム「Love
Songs Letter」をリリースし、ライブやラジオなど精力的に活動してきた五十嵐。この日会場に足を運んでみれば、コロナ禍とはいえ、生の歌にまみえる期待と幸福感が座席を埋める観客の間に漂っていた。
「愛は風まかせ」で、スタート。その第一声から、声の瑞々しさ、伸びやかさ、張りに驚く。65歳だったよな、と改めて確認する始末。前説の駄洒落にくすぐられていたことなど、一気に忘れてしまう。こんなに声がよく出ているということは、どれだけ時間をかけて準備をしたのだろうと、今日のために積まれた鍛錬や研鑽に思いをはせる。
ギターとピアノをバックに軽妙なトークをはさみながら「街は恋人」「東京って」などなじみのある曲に、客席も一緒に歌いたいところをぐっと我慢して、惜しみない拍手が寄せられる。
ここでゲストに佐々木幸男が登場。昨年末にリリースされた佐々木のアルバムにコーラスで参加していた五十嵐とは、息の合った不思議なテンポの会話で和ませたり笑わせたり、一緒に歌ったりと楽しませてくれた。
弾き語りあり、駄洒落オン・パレードのMCや、五十嵐ゆかりの地、新ひだか町三石特産の花束贈呈など、時間のたつのを忘れるほどで、「ディープ・パープル」を聞いたとき、ふと、我に返り、こんなにもさわやかに、透明感あふれる声を持ち続けていることへの驚きが、改めて湧き上がってきた。
彼がデビューした1980年には、シティ・ポップという言葉がよく使われていて、五十嵐の楽曲はまさにその申し子のように言われていた。確かに都会的な洗練されたメロディーと、軽やかなサウンドは彼の声質によく合い、今なお古びない魅力にあふれている。しかし歌っている当の本人はデビューから42年を数え、今や65歳。それなのに彼の声のしなやかさ、透明度は失われていない。
思うに、彼は歌の作り手としても楽曲提供や、プロデュースなども手掛けるかたわら、一貫して歌い手としての自分も磨き上げてきたに違いない。自身のフェイスブックの中で「人生は儚い一瞬の夢のようなもの。努力した人に運命は味方をする。」と語っていた五十嵐。表に見せる姿は、相変わらず軽やかでさわやかだ。しかしその陰には人知れずたゆまぬ努力を続ける姿があることを、この日のステージで図らずも証明してくれた。
声援の代わりに、手拍子や拍手で精一杯応援し、祝福した観客には、一足早い春が訪れた夜になったに違いない。そして「歌もギターも、もっとうまくなりたい」という五十嵐が、次のステージでは何を見せてくれるのか、という“待つ楽しみ”を逆にプレゼントされた、バースデー・コンサートでもあった。
※画像は五十嵐浩晃デビュー40周年記念アルバム「LOVE SONG LETTER」(2020年5月27日発売)。 当サイト、左メニュー「PROMOTION
WINDOW」第89回に動画コメントいただいております!こちらもぜひご覧ください!
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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