著作、出演、講演の他、音楽関係、各種コーディネート、及びプランニング・コンサルティングなど、弊社及び内記章への業務ご依頼は「お問合せ送信フォーム」からお寄せください。
ビートルズ結成50周年の今年、日本のブルース界を支えてきた柱の一つ、BAKER SHOP BOOGIEが結成40周年を迎え、そのアニバーサリーカバーアルバム「1972BROTHER2」(WESS RECORDS WHCD-92)をこの8月22日にリリースした。
親交の深い加藤登紀子や、ボーカルの澤内明をアニキと慕う、元ARBの石橋凌の「反逆のブルースを歌え」などの楽曲をはじめ、競演を果たしているオーティス・クレイのナンバーやジャジーなアレンジで生まれ変わった「見上げてごらん夜の星を」等々、邦洋取り混ぜ11のカバー曲が多彩な輝きを放っている。
一口に40年と言っても円熟味とか重厚感を押し出すよりも、ソフィスティケートされた軽やかさや、いい意味でいくつになっても何をしでかすかわからないやんちゃな素顔がのぞくアルバムだ。ストレートにガツンとくる味わいというより、聞くほどに味わいの深まる、例えは悪いが噛めば噛むほど旨味の出るスルメのようでもある。
その彼らが8月25日地元、札幌ジャスマックプラザザナドゥで記念ライブを行った。
地元の若手バンド小嶋トオルBANDがオープニングアクトを務め上げると、いよいよ主役の登場だ。
ギターの吉田はじめが3曲ばかり聞かせてくれ、続いてボーカルの澤内がピン・スポットの中、大きく体を動かしながらパフォーマンスを開始。今回のアルバムからの楽曲を中心に、「ひとり寝の子守唄」では渋く、「Infinitely」では甘く切なく、アルバム以外でも「星の流れに」を味わい深く歌いあげたかと思えば、「ソウル・マン」や「プラウド・メアリー」では会場を(クラブではなく)ディスコに変えてしまうほど熱くシャウトして、64歳とは思えない喉を存分に聞かせる。
会場をぎっしり埋め尽くした往年のファンを始め、全国から駆けつけた観客を前に、骨太な大人のサウンドを高らかに鳴り響かせた。合間には軽妙なMCで親交のあるアーティストの話題や健康ネタで笑わせたり、家族や地元の友人、道外からも駆けつけたファンへの細やかな心遣いを見せたり、後輩ミュージシャンを育て、応援する一面もうかがわせた。
また、朋友、柳ジョージ、ジョー山中を失い、失意のどん底にあった時期から立ち直って、もう一度その意思を引き継ぎブルース界を牽引して行こうという気概をみせた。ラスト近く、澤内が歌う「BROTHER」を聞いていて、朋友に捧げているのだと感じ、胸の奥を揺さぶられた。
そして札幌でのライブの締めくくりにふさわしい「My Home Town」では会場全部が一つに大きくうねり、ブルースの雄の熱い息吹を感じ取った。それは熟成を重ねた40年モノながら、未だ熱くソウルフルな魂(スピリット)の健在ぶりを見せつける、嬉しいライブだった。
音の波に酔いながら、遠い昔自分が駆け出しの業界紙記者だった頃、何度も足を運んだ豊平区の「神経質な鶏」の狭い空間で鳥肌が立つのを感じた時と同じ思いがよみがえった。。
(文:音楽ジャーナリスト 内記 章:2012年8月27日)
サブコンテンツ:| 個人情報保護について || このサイトについて |