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日本を代表する女性シンガーソングライターと言えば、我が北海道が生んだ中島みゆき。
1975年デビュー以来オリコンで4つの年代にわたってシングルチャート1位を獲得した
唯一のソロ・アーティストとしても金字塔を打ち立てている。
それから37年を経た2012年、札幌出身の才能豊な女性シンガー・ソングライター3人が、
時を同じくしてメジャー・デビューした。アコースティックギターの弾き語りスタイルは同じだが、
三者三様のオリジナリティ溢れる音楽性とキャラクターが、
音楽業界にどんな話題・反響を呼ぶのか目の離せないところである。
住岡 梨奈
Rihwa(リファ)
山崎あおい
三人を比較して思うのは、それぞれ自分の言葉で等身大の女の子の気持ちを綴るスタイルながら、一人称は住岡が「私」Rihwaが「あたし」山崎が「僕」と表現が異なる。それがそのまま彼女たちの色を示しているようで面白い。
住岡が自分の同一線上に「私」を置いているとすれば、Rihwaの「あたし」は一歩外へ踏み出した、自分よりひとまわりポジティヴな存在、逆に山崎の「僕」は内なる自分をしっかりとみつめ、どこか内省的。ヴォーカルスタイルも声をストレートにぶつけてくる住岡、弾けるようなRihwa、そして語りかけるような山崎と、同じギターの弾き語りながら受ける印象は三人三様だ。
しかし三人とも「今の自分」を「自分の言葉」で表現し、「自分のスタイル」で伝えている。詞の力、曲の力、声の力それぞれのオリジナリティが際立っている。それが心地よかったり切なかったり、あるいは元気になれたりする源になり、聞き手の心をとらえて離さないのだろう。
ここでギター弾き語りスタイルの女性シンガーソングライターの歴史を振り返ってみたいと思う。フォークの流れをくんだ森山良子やイルカの世代から、ニュー・ミュージックと呼ばれる世代の中島みゆきの登場で一時代が生まれる。彼女が築き上げた女性シンガーソングライターの牙城が、崩れることのないゆるぎないものとして大きく立ちはだかって久しかったため、その後様々なアーティストが登場しても世代交代が難しかった。
しかし、YUIの登場によって、シーンにひとつ新たな風が吹いたのだ。2005年「feel my soul」でデビュー。その後の活躍によって新たなシーンを作り出した。それは、彼女に影響されてギターを手に歌いだす女の子たちが急増したことだ。彼女の詞を受け止める世代の、共感呼ぶ力がYUIにはあった。そして彼女の声が聞く者のハートをわしづかみにする魅力があった。YUIが歩く道の先に女性シンガーソングライターのひとつの未来が見える。そして影響を受けた世代が今回デビューする3人の世代と重なるのである。
この夏、期せずして札幌からこのギター弾き語りスタイルの女性シンガーソングライター(それも同世代)3人が世に出たということは、ひとつのムーヴメントとしてとらえる見方もできると思う。古くは三人娘、御三家、新御三家、花の中3トリオなど3人をひとつのくくりに仲間、あるいは好敵手としてシーンを盛り上げてきた例がこの業界には多くある。時を同じくしてこの3人が札幌からメジャー・デビューすることに、何かの意味を感じずにはいられない。
多くのアーティストを排出し、音楽を育てる豊かな土壌を誇った北海道だからこその期待を込めて願う。メーカー、プロダクションが異なるというハードルがあることは十分承知で思うのは、3つの点ではなく、繋げることによって線にも面にもなる、北海道(札幌)発信のムーヴメントとして業界にアピールできれば、いい意味で今後の注目度や展開が違ってくるのではないだろうか。
(音楽ジャーナリスト 内記 章:2012年7月19日)
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