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凍てつく夜に届けられたあったかいステージ。お馴染み我らがミスター・スターダスト、みのや雅彦のリアルライブツアー2018『いつか涙で笑い合いたい』スペシャルファイナルが札幌市教育文化会館・大ホールで開催された。
ピアノの音色が幕開けとなって本日の主役登場。しかし、まさかの一曲目からツアータイトルにもなっている「いつか涙で笑い合いたい」とは。4年振りのオリジナルフルアルバム「あなたが幸せになれないはずがない」をこの秋リリースしたばかりだから、当然このツアーはその楽曲が中心になって来るだろうと予想はしていたが、まさか一曲目にツアータイトル曲を持ってくるとは、これは相当な自信の表れでもあろうと踏んでいたら、本人自身がMCでそう明かした。つまりどの曲をもってしても今の最高のみのやをお見せできる、ということなのだろう。気負いもなくてらいもなく、かといって慣れ過ぎることもなく、みのやのピークを見てもらおうという意気込みが静かに伝わって来る。
「青空の虹」「季節」とMCをはさみながら新アルバムの楽曲を披露していく。そこには客席の呼吸と熱を測りながら、どこで仕掛けようか、どこで爆発しようかと探っているみのやの手綱さばきが感じられる。笑ったり、うっとりしたり、次第に胸の奥をかきたてられながら、今か今かと待ち構える客席も熱を帯びてくる。
ピークが訪れたのは後半に移って珍しくみのやが代表曲のメドレーをギターの弾き語りで歌った時だ。みのや本人がメドレーは好きじゃないと言いながら「白い嵐」「夢しかなかった」「百の言葉千の想い」など歌い紡いでいくと、(彼の弁を借りるならば)まるでそれ自体が一つの作品のように、散りばめられた楽曲が幾色もの糸で織り上げられた一枚のタペストリーのごとくに仕上がったのである。思わず客席からも歓声ともため息とも取れる声が漏れた。ここで、ステージと客席の呼吸がぴたりと合った。
彼のステージに足を運ぶ人々は、必ずしも元気いっぱいで幸福な人ばかりではなく、むしろ萎えた心を奮い立たせたい、傷ついた心を癒されたいという望みを叶えにやって来る人も少なくない。しかし、ひとたび会場に足を運べば、その空気を吸いみのやのオーラを浴び、胸の奥底から温められるという得難い経験をする。この日もアルバム「あなたが幸せになれないはずがない」収録の全12曲と既発曲7曲、そしてメドレーと十二分に味わい、満足感と或る種の達成感をステージと客席が共有できるという、みのやのコンサートならではの幸福感を味わったに違いない。
20歳でデビューして、今年57歳になった。57歳になったこの歌手が、ポップでロックでパンクなフォークを歌う。そこには甘さ、せつなさ、苦さ、しょっぱさ、いくつもの味が、いくつもの色でじんわりと滲み出て、腹の底から笑わされ、隠しきれない涙を流し、心底温もりに浸る心地良さと、顔を上げる勇気をもらう。20歳の頃、60歳になった時、その年にならなければ歌えない味わいの出せる歌手になっていたいと語った彼も、歌手生活38年目を迎え、後3年で還暦、歌手生活40周年となる。その時どんな歌が披露されるのか、今から楽しみで仕方がない。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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