著作、出演、講演の他、音楽関係、各種コーディネート、及びプランニング・コンサルティングなど、弊社及び内記章への業務ご依頼は「お問合せ送信フォーム」からお寄せください。
珍しく雪の少ない1月を迎えた札幌に、今年もこの男の声が響いた。
7人編成のバンドを従え、「偶然」でスタートした今年のステージ。ふと、みのやの声が柔らかいのに気づく。喉が良く開いているようだ。続いて「君は今泣いたりしていないか」を聞いて肩に余計な力が入っていないのが見て取れた。
いや、どうせいつものように大好きなスパで体の方も整えてきているに違いない、と思っていたら、当の本人がMCでポロリ「マッサージの人があんまり肩バリバリなもんだから、ダメだこりゃって言っていた」と裏話をしてくれた。
和やかな空気の中、いつものように、身の回りの話や可愛がってくれる先輩(例によって物まねで再現されるが、今年は松山千春と田中義剛)の話などをはさみながら歌い紡いでいく。「笑えないピエロ」「GOAL」「雪の花」「夢しかなかった」あたりを聞いていると、20才でデビューして還暦とデビュー40周年が目前のみのやが、今夜も笑わせ、酔わせ、泣かせるのかと、当たり前の様に思いながら、実はそうではない事に気づく。
どんな時も最高の歌を届けることに心を砕いてきたこの大男は、まるで赤ん坊のようにわがままで野放図で無邪気に歌と取っ組み合っている。それは58才になった今も、渋みとか円熟味といったものとは全く無縁の世界で、別に寅さんよろしく馬鹿だからとか、成長しないからと言っている訳ではなく、表面はどう汚れ傷つこうと、純真無垢な魂のまま歌と向き合うと決めた時からずっとその姿勢を貫き通しているだけなのに違いない。
毎年、約束の様に当たり前に素晴らしいステージを届けるために、どれだけ細やかな神経を使って入念に用意を重ねてきているのか、そんなことはみじんも感じさせない自然体のみのやがいる。
が、何年もステージを見続けていると、おや、今年は何だか張り詰めたものがあるぞ、とか、今年はおおらかで開放的だなとか、何だか力が入っているぞと感じるがことがある。その上でみのやがどれだけメンバーやスタッフと力を合わせ、ステージを作り上げているかに思い至ると、当たり前が当たり前でないと気づくわけなのである。
だから彼の言葉は胸を打つし、メロディーは心に響く。そしてあの声は深いところまで届くのだ。
休憩をはさんで「百の言葉千の想い」で後半がスタートした時、その思いは確信に変わった。みのや雅彦は枯れたり熟れたりしない。産声が歌声にかわっても、生まれたての赤ん坊の様な図々しさで、瑞々しさや若さ、青さ、無某さみたいなものを手放したりなくしたりはしない。良い大人にならなくても、良い歌手になればいいから。
「この空と僕だけは」「遠方より友」「私はもう此処にいない方がいい」と歌い継いでいく。愛とか人生、喜びや悲しみ、時に軽やかに、時には重く、胸の内側に流れ込んでくるみのやの歌は、ステージ上で結ぶ約束を結び目として、長く人々の心をつなぎとめてきたのだろう。
そして、それはスタッフやこの日ステージをみのやと作り上げた7人のバンドメンバーやコーラスも含め、大きな結び目となって次へ継がれて行くに違いない。
プロレスや母などMCお馴染みのネタにも 笑いや感動をもらい、懐かしい歌やCD化されていない曲にも力をもらい、「君の涙を僕は知っているから」でステージを締めた後も拍手を続ける観客に、4曲のアンコールをもって、全力で応えていたみのや。
次回また、力むことなく大きな結び目を作って40周年と還暦を迎えるまでの一年を過ごすのであれば、今度は何をステージにもたらすのか、待ち遠しい気がしている。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
サブコンテンツ:| 個人情報保護について || このサイトについて |