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1999年の開始以来、今年で20回目となるRISING SUN ROCK FESTIVAL2018 in EZOが、8月10日(金)、11日(土)の二日間、石狩、小樽両市にまたがる石狩湾新港の特設会場で開催された。
昨年に引き続き、天候には恵まれなかったものの、全てのチケットは完売。延べ7万4千人が7つのステージに登場する約100組のアーティストの熱演を楽しんだ。
初日のSUN STAGE、トップバッターはKEMURI。ぱらつく雨など意に介さぬ熱いステージに、詰めかけた観客も両手を突き上げ応える。RED
STARFIELDではサンボマスターが体調不良のため急遽出演キャンセルとなったThe BONEZのためにと自身のステージに数曲追加して演奏する場面も。一向に止む気配の無い雨の中、岡崎体育、Suchmos、電気グルーヴ、水曜日のカンパネラらが次々に迫力のあるパフォーマンスを繰り広げる。
あたりが暗くなりライトに雨脚が浮き立つ頃、BOHEMIAN GARDENではT字路sが登場し、ギターとベースの絡み合う中、ボーカル伊東妙子の声がいっぺんに当たりの空気を染め変える。だみ声ともしゃがれ声ともとれる野太い声なのに、哀愁を帯びた温もりを感じさせ、2014年に初めてライジング・サンで観た時から、その強烈なオリジナリティは変わることなく、彼らの武器だ。代表曲の「泪橋」や「これさえあれば」、新曲や「襟裳岬」のカバーも含め10曲ばかり、情念のシャウトにひと時雨すらもなりをひそめ、世界に浸らせてくれた。
夜が深くなり、SUN
STAGEからは青いライトが闇に放たれ、それがまばゆい光に変わるとともにサカナクション登場。「サンプル」「アイデンティティ」「セントレイ」と矢継ぎ早に放つ。地元北海道とあって一段と強まる雨にも屈せず、オーディエンスを煽る。しまいには雷鳴轟きものすごいどしゃ降りへと変わる天気に、負けじと山口一郎の声が響く正に嵐を呼ぶステージとなった。
深夜のキャンパーズ向けプログラムの中、def
garageで恒例のFRIDAY NIGHT SESSIONが行われ、今年はbloodthirsty butchersトリビュート・セッションがホストの怒髪天を中心に進行。椎木知仁(My
Hair is Bad)、KO(SLANG)、吉野寿(イースタンユース)、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、ブッチャーズのCDジャケットを手がけた美術作家の奈良美智、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、RACCO(Idol
Punch)らがステージに上がり、5年前に急逝したブッチャーズの吉村秀樹の思い出話やブッチャーズの曲を演奏した。そして最後には射守矢雄、小松正宏、田渕ひさ子の3人が活動休止していたbloodthirsty
butchersの音を鳴らし、20年前の第1回、この会場で最後に披露して吉村がギターを空へ投げた「7月」を演奏し、ステージの上も観客も等しくこの20年と吉村に思いをはせた。
降り続く雨で泥んこ田んぼ状態となった会場に二日目がやってくる。
この日はRED
STAR CAFEにかねあいよよかが出演。毎年自宅まで聞こえてくるライジングの音に「いつかライジングで演奏してみたいね。」と言っていた8歳の少女ドラマーが、最年少出演者として「よよかの部屋」と言うステージを務める。家族と一緒に演奏したところでよよかのお友達としてゲストに呼びこまれたのがKenKen。そして奥田民生。よよか作詞作曲の「ハッピー」を演奏後さらにCharが登場。凄い顔ぶれのお友達が揃ったところで、なんとLed
Zeppelinの「 Good Times Bad Times」をやってくれた。さすが世界が注目するドラマ―だけあって、見事な早熟ぶり。末恐ろしくもあり、頼もしくもある。
この日、SUN
STAGE3組目にあらわれたマキシマム ザ ホルモンはうぉーというどよめきと共に迎えられ、いきなり「恋のメガラバ」を浴びせかけた。腕を激しく上下させ踊る観客に「20年の歴史の中で一番の時間作ろうぜー!」と呼びかけ、「鬱くしき
OP〜月の爆撃機〜鬱くしき人々のうた」「便所サンダルダンス」とたたみ掛ける。「絶望ビリー」や「爪爪爪」でヘドバンする観客はもはやステージと一体化して会場中が彼らの一部のように熱く燃え立つようでもあった。
4年振り3度め出演となる山下達郎がSUN
STAGE「SPARKLE」でスタート、ひと際大きな歓声が上がる。新曲「ミライのテーマ」や「クリスマス・イブ」の後には「硝子の少年」、を披露。“ギターがノイズるから”と交換し、お詫びに「ハイティーン・ブギ」も披露。そして後半「アトムの子」からは気づけば3人のコーラスが4人に。竹内まりやだ。「Loveland,Island」「恋のブギ・ウギ・トレイン」と盛り上げ観客もどんどんヒートアップ。「さよなら夏の日」で締めくくったが、その巧みなステージ運びと圧倒的な存在感にはゆるぎないものが感じられた。
夜も深まり日付けが変わる頃RED STARFIELDから早くも音が聞こえてくる。直前まで熱心にリハをやっていたのは竹原ピストル。やがてステージを取り巻く観客を前に手を降るリアクションに照れを見せながらも「オールドルーキー」「よー、そこの若いの」「Forever
Young」など、時には獣の咆哮のように、時には振り絞るように歌い上げ、直球の歌を投げ込んだ。歌の熱量がステージをはみ出すほどに感じられるステージだった。
そして今年のクロージングアクトは東京スカパラダイスオーケストラ。中村達也・奥田民生・チバユウスケ・キヨサク・TOSHI-LOW・ハナレグミ・甲本ヒロト・尾崎世界観・斎藤宏介・峯田和伸と、これまでにない多数のゲストとともに、「美しく燃える森」「カナリヤ鳴く空」「めくれたオレンジ」など次々と見事なセッションを展開し、夜明けに向けひた走る。ラストは、「DOWN
BEST STOMP」そしてアンコールの「Paradise Has NO BORDER」で完全燃焼した。
今年は会場レイアウトが大幅に変更になり、SUN STAGEやEARTH TENT、RAIBOW SHANGRI-LAといったステージの位置やキャンプスペース、駐車場の場所も変わった。馴染のフェス飯屋やDJブースなどを探して戸惑う場面もあったが、逆にステージ間の距離が縮まり、移動時間の短縮が可能になったことで、見られるパフォーマンスは増えたのではないかと思われる。
会場内に家族連れ、それもかなり低い年齢層の子供を連れた親子の姿を多数みかけた。あいにくの天候でかなりタフなフェスになったにもかかわらず、きちんと装備や準備に怠りなく、悠々とフェスを楽しむ余裕すら感じさせる。20年前から参加している世代が親になり、子供にも音楽と人と自然が一体となったフェスを体験し、学び、楽しむ幸せを知って欲しいとの思いからか三世代参加も珍しくなくなってきた。
今年は最年少出演として、小学3年生8歳の少女ドラマ―よよかの登場で、グッと出演者の平均年齢も下がった。山下達郎が「今年は僕が最年長です!」と言っていたが、過去には矢沢永吉、小田和正、ムッシュかまやつらも出演しており、20年の間には先のムッシュや吉村秀樹、忌野清志郎はじめ今年は5月にサニーデイ・サービスのドラムス丸山晴茂が鬼籍に入るものもでてきたが、あたらしく産声を上げるエゾロックもあり、来年の開催日は8月16日(金)、17日(土)と決定している。21回目、22回目、未来へと、時の流れの早さと、受け継がれていく音楽の魂、そして世代を超えて確かな絆が紡がれていくのを感じる20年目のRSRでもあった。
(音楽ジャーナリスト 内記 章)
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