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昨今の音楽状況を考えると、チャートの上位を占めているのはAKB48に始まる女性アイドルグループを筆頭に、ジャニーズ系アーティストや韓流アーティストの活躍がみてとれる。そして、Mr.Childrn,福山雅治らBIG NAMEが上位常連の枠を堅持しているほか、アニメ・声優系も最近ではチャートに顔を出すことが珍しくなくなってきた。
振り返ってみれば、テレビの歌番組華やかなりし60年代後半のGS(グループ・サウンズ〉ブームから、70年代に野口五郎、西条秀樹、郷ひろみの新・御三家やオーディション番組から生まれた森昌子、桜田淳子、山口百恵の中3トリオに代表される由緒正しきアイドル路線が敷かれ、社会現象まで巻き起こしたピンク・レディーなど、アイドルが一ジャンルとして成立したのは70年代だと言ってよいだろう。
それが80年代になると松田聖子、中森明菜、小泉今日子らに受け継がれ、やがて80年代後半にはおニャン子クラブの登場によりそれまでのアイドルの概念がガラッと変わる。
おニャン子クラブは2年あまりの活動期間ながら、秋元康氏の仕掛けが功を奏し、毎週チャートの上位をにぎわせた、1986年などはオリコンシングルチャート1位を獲得した46曲中30曲が、また52週中36週の1位がおニャン子関連で占められ、今のAKB48に見るアイドル戦略の片鱗が伺える。
その強力アイドル路線に取って代わったのが、90年代前半のビーイング・ブームである。B‘z、ZARD、TUBEらに代表されるビーイング所属のバンド勢の台頭は、93年に先の3組に加え、T−BOLAN、大黒摩季、WANDS、DEENらの活躍で一音楽プロダクションとして450億円前後を売上げ、業界全体の7%を占めるまでになった。顕著な例として1993年のオリコン年間総合売り上げチャートにおけるビーイング系アーティストの順位は 1位ZARD 2位WANDS 4位B'z 5位T-BOLAN 10位TUBE 11位大黒摩季 32位DEEN 。また オリコン作詞家ランキングでは、 1位上杉昇(WANDS) 2位坂井泉水(ZARD) 4位稲葉浩志 (B'z)5位森友嵐士(T-BOLAN) 7位大黒摩季。 同、作曲家ランキングは、 1位織田哲郎 3位松本孝弘(B'z) 6位大島康祐 (WANDS)7位森友嵐士(T-BOLAN) 8位栗林誠一郎 と、どのランキングもビーイング系列一色の体をなし、他の追随を許さなかった。 この隆盛は90年代後半からのモーニング娘。旋風や、安室奈美恵、宇多田ヒカル、浜崎あゆみへと続くディーヴァブームが起こるまで続いた。
そのビーイング・ブームの立役者だった最強アーティストたちの中から、T−BOLAN、FIELD OF VIEW、DEEN、B.B.クイーンズが「BEING LEGEND」という名のライブ・ツアーを開始した。10月4日から全国17か所19公演の8日目、札幌公演(ニトリ文化ホール)に足を運んだ。
会場に詰めかけたファンの前に表れた4グループ。総立ちで迎える観客席に熱いプレイを届ける様は往時と変わらない。“伝説”の名に恥じないパフォーマンスに、同窓会的な雰囲気かとの予想は気持ちよく裏切られ、もっと生々しいサウンドの立ち上るステージに釘付けとなり、感傷にふける暇などない。
圧巻だったのはT−BOLAN。ボーカル森友嵐士の心因性発声障害から活動休止、その後解散したが、森友はリハビリを続け09年にソロとして復活。昨年の大震災後のボランティア活動を通じてファンの要望に応える形でT−BOLANを13年ぶりに再結成。今回は実に17年ぶりのステージである。待ち受けるファンの前に姿を現した彼らは、「あの曲が聞きたい」という切なる願いをかなえ、圧倒的な拍手をもって復活劇の成功を証明した。
伝説は終わらない。このツアーを機に、新たなページが書きくわえられることになるだろう。
(文:音楽ジャーナリスト 内記 章:2012年10月23日)
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