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全く予想を裏切るライブだった。9月4日にリリースしたばかりの全編シャンソンのアルバム「Scarf」の収録曲がメインのステージかと思いきや、オープニングからアカペラで松山千春の「大空と大地の中で」を高らかに歌い上げ、その圧倒的な歌唱に会場は水を打ったように静まり返る。北海道への挨拶とも取れなくはないが、道外からも駆け付けたファンにとっては、至近距離で彼のプラチナヴォイスを浴びるという、想像以上の幸せにのっけから遭遇し、戸惑う間もなく釘づけにされる幕開けとなった。
「サロン・ド・アンジェリーク」と題されたライブも9回目を数え、彼にとってもこれだけ客席との距離が近いのも初めてという、札幌のライブ・スポット「くう」は、一気に奏の世界一色となる。グランドピアノを囲むように客席がしつらえられ、手の届きそうな空間にいながら、ひとたび彼が歌い出すと、瞬く間に空へ駆け上って手の届かない存在になってしまいそうな錯覚さえ覚える。そのぐらい奏の歌唱には圧倒的なものがある。
ちょうど10年前、川上大輔として日本歌謡の名曲「べサメムーチョ」で華々しくデビューしたとき、その恵まれたビジュアルと女性歌手より高い音域を誇る美声に驚き、世間の注目を集めたのも、むべなるかなと思っていた。その彼が、昨年、奏大翔に改名し今年3年ぶりにリリースしたアルバムがシャンソン、ということは今日はどんなステージになるのだろうと思っているところへ、冒頭の一曲である。嬉しさ<驚きが正直なところだった。
しかし、相変わらず艶やかで表情豊かな、特に高音域は官能的とさえ思えるほどに怪しい魅力さえ放つ、唯一無二の声なのである。その声で、客席の呼吸を自在に操りながら、自らピアノの弾き語りで「Scarf」披露したり、布施明の「カルチェラタンの雪」や玉置浩二の「カリント工場の煙突の上に」、安全地帯の「あなたがどこかで」などのカバーも巧みにこなしたりする。ギターの伴奏で川上大輔名義の「アモーレ・アモーレ」「べサメムーチョ」「女神のリズム」の3曲を歌うと、デビューからのファンの間には懐かしさと喜びに溜息さえ漏れる。そして、最後はまた自らピアノにむかうと「マイ・ウェイ」「愛燦燦」を弾き語るという、感動的な二曲でライブを締めくくり、たっぷりと余韻を残してくれた。
二時間にわたるステージは、クオリティの高さからいっても聞き応えからいっても大いに満足させてくれるもので、彼自身も存分に楽しんでいるのが見て取れた。おそらく、この先彼が目指していくところ、思い描くアーティストの形を、具現化してみせたステージになっていたに違いない。そう思わせてくれるライブだった。
(2023年10月21日 ライブ・スポット「くう」で開催、文・内記章)
当日、行ったインタビュー動画はこちらからご覧いただけます。
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